足りない人材は世界中から補えばいい
地方自治に真正面から取り組んで、中央から権限を剥ぎ取り、一定の結果を出すまでには最低10年かかると私はみている。それはこれまでにマレーシアのマハティール(元首相)や台湾の李登輝(元総統)、先月、権力闘争で大トラブルに巻き込まれて失脚した中国の薄熙来(共産党中央政治局委員、元大連市長、元重慶市党委員会書記)など、数々の権限を持つリーダーと組んで地域振興プロジェクトを手掛けてきたが、構想を練ってから見通しが立つまでに最低10年はかかったからだ。
さらに最先端のITインフラを整備して、世界中から企業を呼び込むことを目的としたマレーシアの「マルチメディア・スーパー・コリダー構想」。1995年に構想のレポートを作成して、当初の目標をクリアして一区切り付くまで17~18年かかっている。中国・大連のソフトパークとBPO事業は、薄熙来という強力なリーダーがいたおかげで早かったが、900社の企業を誘致して9万人の雇用を生み出すまでに、10年以上かかっている。
本気で地域活性化に取り組めば取り組むほど、どうしても時間はかかる。世界に周知徹底し、進出してもらい雇用を生み出すまでのプロセスを考えると、簡単に計画だけ立てれば結果が出てくる、とならないことは誰でも理解できるだろう。そういう認識が、今の日本の地方政治のリーダーにあるのかどうか。3期12年の知事もいれば、4期16年の知事もいるが、ほぼ全員が地方自治と地域振興の長期的なプランを持っていないため、中央から権限の一つも奪えずに、せいぜい交付金をもらってくるだけで終わってしまう。
さらに地方における人材の問題もある。地方でプランを練り上げて、中央から必要な権限を100%渡されたとしても、現状では地方の受け手の能力が、(世界からヒト、カネ、モノを呼び込んで)繁栄する自治体を実現していくレベルには全然達していない。地方の議員も役人も、これまで交付金の“運搬係”しかやったことがないのだ。
改革開放路線に20年以上かけた中国では、今やそれぞれの都市が発展を競い合っている。100万都市だけで何と200もあり、彼らは年率8%以上で成長しないと評価されない。経済成長で結果を出すことがすべてなのだ。そのため、全権を握った市長はさながら“マーケティングマネジャー”である。自ら世界中を飛び回り、「ウチに来てくれ」「条件はこれだ」と交渉する。そのため、300社、500社呼び込んだ工業団地が天津や蘇州など中国全土に散らばっている。
今のままでは日本の市長は、彼らに太刀打ちできない。こうした営業センスのある人材を育てるのにも時間がかかるため、足りない人材は、世界中から補えばいいという発想が不可欠だ。