企業型のマッチング拠出かiDeCo加入か

次に二つ目の決断ですが、それは「企業型のマッチング拠出とiDeCo加入のどちらを選ぶべきか」ということです。

これについては少し説明が必要です。そもそも企業型確定拠出年金の大原則は「会社がお金を出す」ということです。なぜなら「企業型確定拠出年金」というのは会社の退職給付制度の一つだからです。ところが中には、会社の出す掛金に上乗せして従業員が個人で掛金を出すことが制度として認められている会社もあります。この「従業員が個人で掛け金を出すこと」をマッチング拠出というのです。

今回の改正で企業型に加入している人もiDeCoに加入することができるようになったとは言うものの、マッチング拠出をやっている人はiDeCoを利用することができません。つまりマッチング拠出をするか、それともiDeCoに加入するか、のどちらかを選ばないといけないのです。これが二つ目の決断です。

写真=iStock.com/Thanmano
※写真はイメージです

ポイントは会社の掛け金

企業型確定拠出年金における掛金の上限額はその会社がどのような退職金制度を採用しているかによって異なりますが、ここではわかりやすくシンプルにするために上限金額が最も高い5万5000円、そしてiDeCoの掛金上限額はこの場合2万円となるので、この数字を前提として考えてみます。

マッチング拠出には2つのルールがあります。①会社が出す掛金以上の金額を従業員が出すことはできない。②会社の掛金と従業員の掛金の合計額がトータルの上限金額(この場合は5万5000円)を超えてはならない、というルールです。

一方、この場合のiDeCoの掛金ルールも次の2つです。①iDeCoの掛金は2万円を上限とする。②会社の掛金とiDeCoの掛金の合計額がトータルの上限金額(5万5000円)を超えてはならない、となります。どちらも②の場合は同じ条件です。したがってマッチングかiDeCoかのどちらを選ぶかは、①の状況がどう変わってくるかによります。

仮に若い社員などでまだ会社の掛金が少ない場合、例えば掛金が2000円とかであれば、マッチング拠出も2000円しか出せませんがiDeCoなら2万円まで出せます。一方、会社の掛金が2万円を超えて2万7500円までの間ならiDeCoが2万円までしか出せないのに対してマッチング拠出は会社の出す金額に応じて2万7500円まで出すことができます。ここからわかることは、会社の掛金が2万円までならiDeCoを選ぶ方がより多くの金額が積み立てられるし、2万円を超えるとマッチング拠出の方がより多くの金額を利用できるということです。

もちろん、どちらが有利とは一概には言えず、自分の出せる金額と利用可能額を考えてどうするかを決めればいいわけですが、使える枠はフルに使うという前提で考えれば前述のような基準を参考にしながら、自分で判断をするのが良いでしょう。

10月からの新しい制度がスタートするにあたって、一度自分の老後に向けた資産形成を始めるきっかけとしてiDeCoの活用を考えてみてはいかがでしょうか。

関連記事
75歳まで我慢すれば84%増になるが…お金のプロがあえて「66歳から年金受給」をオススメする理由【2022上半期BEST5】
年金受給は何歳まで先送りしたほうがいいのか…利用者の少ない「繰り下げ受給」を専門家が勧めるワケ
だから定年まで会社にしがみつこうとする…日本企業の競争力を下げている「退職金」という奇妙な制度
「こうすれば年間35万円の負担が減らせる」高額な介護費用を避ける"世帯分離"という手
「手始めにFXから…」老後資金のためにFXを始めようとする40代が答えた危なすぎる理由