「整理しない」「覚えない」

『スパークする思考』は、見出しだけ見てもフツーの情報整理本と一線を画していて面白い。


      情報は整理するな、覚えるな
      情報は無理に集めるな
      思いだせない情報は大した情報じゃない
      時が情報を熟成させる
      脳にレ点を打つ方法
      …

つまるところ、情報は整理もせず、覚えず、何か気になることだけ頭の中「レ点をつけておく」だけにして、あとはほうっておきなさいという話である。この「レ点をつける」というのが独特にして肝心なポイントだ。「いい曲だな」でも「面白い映画だな」でもなんでもいいが、自分にとってピンときた情報について「とりあえずインデックスをつける」。もちろん脳内で、である。ITもスマートフォンも関係ない(別に使ってもよいが)。脳内でレ点を打つというのは、すなわち情報を注意に変換するということである。

スパークする思考
[著]内田和成
(角川グループパブリッシング)

脳のなかでレ点を打った情報は、そのまま「引出し」にしまっておく。言うまでもなく「脳内の話」であって、物理的な引き出しがあるわけでも、特別のファイリング・システムがあるわけでもない。内田さん自身は、常に20くらいの引き出しを持っているのだという。引出にはそれぞれテーマがあり、テーマはときどき入れ替わる。20ある「脳内引出し」の中にはそれぞれ見出しがついている。これが内田さんの「注意」のフィルターになっている。このフィルターをもって情報の中に身をおいていると、引っ掛かる情報は自然と引掛かって引出に仕分けされる。引っ掛からない情報はさしあたって自分には意味のない情報だからどうでもいい。無視するに限る。

あくまでも問題意識をメインにして、それに引っ掛かる情報だけテーマごとにインデックスをつけて頭のなかの引出しにしまっておく。重要なのはひとつの情報にいくつでもインデックスをつけられることだと内田さんは言う。すでにある引出しにしまいこんだ情報でも「これは別の解釈もできるな」と思ったら別の引出にも入れておける。なにぶん脳内なので、話が早い。いくつものインデックスがついた情報は、ふとしたきっかけ、たとえば人と話していたりなにかをちらっと目にしたりしたときに「スパーク」してひらめきを生む。