破綻でたどり着いた「シンプル輸送」

貨物機を持たない輸送は旅客で世界TOP5以内の輸送力を持つ米国三大エアラインであるアメリカン、デルタ、ユナイテッドが実践している経営方式でもある。

貨物輸送に関しては、フェデックスやUPSといったインテグレーターと呼ばれる航空複合一貫輸送の専門会社が一手に引き受ける。貨物輸送は専門会社に任せる餅は餅屋方式だ。

規模は違うが、日本にも日本貨物航空という国際路線を専門とする貨物航空会社がある。

筆者撮影
NCA日本貨物航空のボーイング747-8F。

過去のイベントリスクでは貨物の輸送量が減った。湾岸戦争、911米国同時多発テロ、SARS、リーマンショック、東日本大震災などだ。この先もいつ起こるか誰にも想像はつかない。2005年以降で最大の落ち込みを記録したリーマンショックの影響で、2009年の貨物量は対前年比で輸出28.6%、輸入で16.3%減少した(前出の国際航空貨物動態調査報告書より)

現在はコロナ禍で、全体の貨物量が大幅に増えた訳ではない。国際線旅客機の運航回数が減り床下輸送スペースが大幅に縮小されたことでスペースの取り合いが起こり、運賃が上昇するという一時的な現象が起きている。

海上貨物もコロナ感染拡大による港湾職員の減少で荷役が混乱し、航空貨物へ輸送モードが変わることがあった。過去にこのような事例はなく、これはコロナ禍だけの特殊事情だ。

日本の航空貨物マーケットでは、将来発生するイベントリスクで経営が翻弄ほんろうされるくらいなら、床下ビジネスで安定的に稼いだほうが持続可能性の高い効率的なビジネスだと筆者は考える。

述べてきたように、JALは旅客機床下を最大活用した上で貨物機を借用し、地味でも効率的に貨物事業の売り上げを拡大できた。2010年に経営破綻せずに貨物機を持ち続けていたら、コストがかさみ再起不能になっていた可能性がある。

経営破綻は不幸中の幸いか、現在の貨物ビジネスはJAL破綻によって導かれた稼ぎ方の帰結なのだ。

筆者撮影
羽田空港を離陸するJAL国内線主力機A350-900(JA06XJ)LD3コンテナを36台搭載できる
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