旧統一教会は本当に「反共」なのか

政治家がもっている感覚への認識を誤ってはいけないのと同時に、旧統一教会への認識も間違えてはいけません。旧統一教会は、反共産主義を掲げる関連団体「国際勝共連合」を通じて、日本の保守政界に浸透しました。この関係がクローズアップされているために、旧統一教会という存在を反共イデオロギーというプリズムだけで見てしまいがちです。しかしそれでは、事柄の本質を見誤ります。

旧統一教会という宗教団体は、南北統一を悲願とする韓国/朝鮮ナショナリズムの性格を強く帯びています。反共は、東西冷戦の60年代後半から80年代にかけて、日本や韓国、アメリカの保守政権に取り入るための方便でした。

したがって冷戦が終わると、共産主義国家に対する旧統一教会の姿勢は、劇的に変化しました。創設者の文鮮明氏は、1990年にモスクワを訪れてロシアのゴルバチョフ大統領と会談。その翌年には、平壌で北朝鮮の金日成国家主席と会談しました。文氏は東西冷戦の終結をリアルに悟り、旧統一教会は西側諸国と北朝鮮をつなぐ重要なパイプに姿を変えたのです。

いまも勝共の看板を下ろさないのは、そのほうが保守政界と関わる上で便利だからにすぎません。

写真=EPA/時事通信フォト
1991年に訪朝し、乾杯する世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の創始者、文鮮明氏(左)と北朝鮮の金日成主席(北朝鮮)

「民族の和解と団結、朝鮮半島の統一」のための努力

旧統一教会と北朝鮮の親密さは、弔意の表し方を見ても明らかです。

この9月で、文氏の死去から10年です。北朝鮮は、追悼文を公表しました。

北朝鮮の朝鮮アジア太平洋平和委員会が(8月)13日に、「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」の創始者・文鮮明氏の死去から10年に向けた追悼文を遺族に送った。「文先生の遺志を受け継ぎ、すべてがうまくいくことを願っている」などとしている。北朝鮮のウェブサイト「わが民族同士」が記事として伝えた。

同委員会は、北朝鮮の韓国に対する工作機関である朝鮮労働党統一戦線部の傘下組織。記事によると、追悼文は、文氏の妻で教団の総裁を務める韓鶴子(ハンハクチャ)氏ら遺族に宛てられている。

9月3日で死去から10年となり、「深い哀悼の意を表する」としている。また、文氏を「民族の和解と団結、(朝鮮半島の)統一と世界平和のために傾けた、文鮮明先生の努力と功績は末永く思い出されるだろう」とたたえている(8月14日「朝日新聞デジタル」)