ダイアナとチャールズ&カミラの対立を煽るメディア

塩田さんと同じように、ロイヤルメンバーの人間臭さを語るのはイングランドとスコットランドの国境沿いの街、ベリック・アポン・ツイードに住む投資家のマーク・ピアソンさん(60代)。筆者は女王が亡くなる直前に取材した。

「明らかなのは、彼らは王族である前に我々と同じような人間だということです。間違いを犯すこともあるでしょうし、チャールズ皇太子もダイアナ元妃も人間としての正直な欲求を貫き通しただけです。

写真=iStock.com/PictureLake
※写真はイメージです

その人間臭さにフィーチャーしたのがマスメディアです。メディアはダイアナがとにかく大好き。反対にチャールズ&カミラは嫌われ者。そういう対立構造を作った方が、テレビは数字が取れるし、新聞も雑誌も売れる。

チャールズは慈善事業をはじめ、環境問題や有機農法などに関心を持つなど、評価に値するさまざまなことをしているのに、気の毒な存在です」

マークさんは王室に特に関心があるわけではないが、冷静な分析をするインテリジェンスの持ち主だ。

「でも最近風向きが変わったようです。今年で96歳、健康に不安があるエリザベス女王の継承者としてチャールズ皇太子が適任であると、メディアはかきたて始めました。チャールズを飛ばして長男のウイリアムを次期国王に、という声もなくなってきましたね」(マークさん)

マークさんの指摘通り、女王の死後、チャールズ国王に期待する国民の声がどんどん高まってきたし、カミラも同様だ。女王は今年の2月に、カミラをQueen consort(王妃)に希望すると発表したことで、将来の王妃として認めた。それまでカミラの将来の称号はPrincess consort(国王夫人)としていたが、長年チャールズを陰になり日向になりサポートした努力がようやく実ったようだ。

チャールズのLongest Apprentice(長い修業)は終了

「イギリス人は、変わり身が早いというか、無駄なゴシップは叩かない性質のようです」と言うのは、イギリスに移住したビジネスマンの小高実さん(50代)。

女王崩御の後に訪れたシアターでは、黙祷の後にNational Anthem(賛歌)が流れたが、歌詞が「God save the King」(神よ、国王を守り給え)に変わったことに違和感を覚えたとも。「でも、そのうち慣れるのでしょうね」と少し寂しそうに笑う。彼のパートナーは、イングランド国教会の牧師である、ベン・ラットフォードさん(70代)。ベンさんは5歳の時に、テレビで女王が戴冠式を行う様子を見ており、いまだにその記憶が鮮烈に残っていると言う。そして女王の崩御も目にした。時代の大きな変革期の目撃者だ。

「私は牧師ですから、イングランド国教会の首長であった女王は、私のボスのようなものです。あれからずっと賛歌はGod save the Queenで、歌詞にもあるように女王の御代が永遠に続くように思っていました。でもいつか終わりが来ることを女王は誰よりも実感していた。その間、女王は公務をこなしながらも着々と準備をしていたのです。自身が戴冠式でかぶった王冠をチャールズ国王、その後はウイリアム王子へと渡すため、英国王室が長く続くための準備です。チャールズ国王にとってもLongest Apprentice(長い修業)でしたが、無事に終わったようです」(ベンさん)。

「去年はコロナに悩まされ、今年は物価高と不景気、頻発するストライキ、首相の交代と、国民が不安を感じる要素がイギリスにはたくさんあります。だから今こそ我々の心の支えである女王を強く必要とする時期です。女王が亡くなったのは非常につらいのですが、彼女の君主としての手腕や美意識をチャールズ国王はずっとそばで見ていた。そして女王と同様に『人生を国民に捧げる』と宣言した彼を国民は見直したようです」(小高さん)

一時期反目し合った母と息子。しかし、彼らは長い時間をかけてお互いを認め理解しあったようだ。息子チャールズ新国王は“愛するママ”から受け取った大きな使命を、まさに母がやった通りに果たそうとしている。

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