若年層から壮年層へと深刻さを増すネット依存

高度成長期にテレビが登場し、急速にテレビ視聴時間が増加した時代、子どものテレビの見過ぎが親の心配事となり、目が悪くなる。ばかになるなどの弊害が論じられた。

インターネットについても、利用時間の急増の裏でネット依存(中毒)による弊害が生じている。そこで、これがどのくらい深刻なのかについての調査結果を見ておこう。

利用時間を調べている総務省情報通信政策研究所の調査では、ネット依存の状況についてもアンケート調査で毎年調べている。

まず、具体的な状況を知るため、調査対象者のうち現実逃避でネットを利用していると回答した人の割合を最近5年間について年代別に掲げた(図表3参照)。

結果を見ると全体として、若い世代ほど、また女性の方が男性より現実逃避でネットに走る割合、つまり精神安定剤としてネットが使われている割合が高い傾向にあることが分かる。

何と10代(13歳以上)の女性では半数以上が、20代女性では半数近くが現実逃避でネットを利用していると答えている。

この5年の動きを見ると10代~20代では上限に達しているようであるが、30~40代では現実逃避のネット利用が増えつつある傾向が認められる。

図表3に示した設問は、実は、ネット依存を判定する8つの設問(いわゆる「ヤング8項目基準」)の1つである。その8設問は図表4に示した通りである。

この8設問の5つ以上に「はい」と回答した者をネット依存傾向者としてその割合の動きを年代別に図表5に示した。

全体として若い世代ほどネット依存が多いという状況が認められるが、最近までの動きは世代によっていささか異なっている。

10代、20代の若者のネット依存傾向は2014〜16年から2017〜19年に大きく増加し、コロナ後は横ばいか低下に転じた。コロナ後の2020~21年には10代の16.3%、20代の9.8%がネット依存と判定されている。

一方、30代、40代の壮年層では、2014〜16年から2017〜19年にかけてはネット依存傾向の者は増えていなかった。ところが、コロナ後の2020~21年には急拡大し、30代の6.1%、40代の3.7%がネット依存と判定されている。

図表2でも見た通り、10代~20代も30代~40代もコロナ後にインターネット利用時間は大きく増加しているが、10代~20代の場合は、それでネット依存が深まったわけでもないのに、30代~40代の場合は、ネット利用時間の増加の一定部分が依存(中毒)によるものだと考えられるのである。

いずれにせよ、ネット依存が若年層から壮年層に広がり、深刻さを増していることは確かであろう。