パナソニックが変わった

私がとにかく強く意識したのは、20年、30年先、いや100年先のために今、何をするべきなのか、ということでした。

あれから5年が過ぎ、私が担当してきたカンパニーは「大きく変わった」「まったく別の会社になった」「変われなかった会社が変われた」といった声を内外からもらっています。

産休・育休から戻ってきたり、ほかのカンパニーから異動してきたりする社員は、本当に驚くようです。

私が何よりうれしいのは、「会社に来るのが楽しい」「日々の仕事が充実している」という声が、社員から次々に上がっていることです。

実際、大きく変わったのは、社内のカルチャーや社員のマインドです。

「内向き仕事」を減らす

当初、私の目に見えたのは、利益を上げたり、顧客満足を高めたりする本来の仕事ではなく、社内調整などそれ以外の仕事に忙殺されている社員の姿でした。

写真=iStock.com/kazuma seki
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しかも、それが当たり前になり、何の疑問も持たなくなっていました。

しかし、今では社内調整など内向きの仕事はどんどん減り、顧客起点の仕事へとシフトしています。与えられた仕事を無難にこなそうとしていた部署が、「必死で頑張るぞ」という空気を出しています。

紙の書類が詰まったキャビネットに取り囲まれ、誰もが毎日、同じ席に座っていたオフィスはフリーアドレスとし、部署の垣根も取り払いました。社長の私をはじめ役員も個室を持たず、いつでも上司に話しかけられる環境ができ、一気に風通しをよくしました。

スーツに代表される、誰もが何も考えずに着ていた画一的な服装をやめようと提案し、カジュアル化を推奨しました。カジュアル化によって、会社の雰囲気は明るくなりました。発想も、画一的から、間違いなく柔軟になったと感じています。