担当役員をつけ、自分事にする

そのために考えたのが、ダイバーシティ担当の役員をつけることでした。しかも、人事担当ではない役員です。彼らがダイバーシティを牽引する。事業部長にはダイバーシティ推進リーダーになってもらい、各事業の中でもダイバーシティが推進されるような仕掛けを考えていく。

一気に全社で大きく変えていこう、というのは簡単なことではありません。そこで、自分の担当する組織からスタートする、スモールスタートを意識しました。本社は温度感が高くても、ローカルの事業部となると、なかなかそうはいかないからです。

そこでダイバーシティ担当役員が、キャラバンとしていろんな事業所を回り、話を聞きにいったり、いわゆるエヴァンジェリスト活動をしたり、推進リーダーをお願いしたりしました。

LGBTQ(性的少数者)にフォーカスしたトピックでのイベントを開催するなど、さまざまな働きかけをしていきました。

まずは管理職の女性比率30%を

担当役員に聞いて、ひとつ興味深かったのは、キャラバンで行った先で、驚きの声をかけられたことでした。

女性から「ダイバーシティ、女性登用なんて、迷惑です」と言われたというのです。

しかし、よくよく聞けば、そういった活動をやめてほしいというわけではなかった。

これまでも、さんざんダイバーシティだ、女性登用だ、と言われて期待したのに、結局、進まなかったというのです。

いろいろなプロジェクトがあっても、続かなかった。これは本気で取り組まなければいけない、と改めて感じました。

日本の大企業では、女性の採用を増やしたとしても、終身雇用でやめる人が少ないこともあって、なかなかその割合が増えていきません。

樋口泰行『パナソニック覚醒』(日経BP)
樋口泰行『パナソニック覚醒』(日経BP)

その比率が30%まで増えれば、理解度も高められる傾向があると言われていますが、そこまでは管理職を増やし、役員も増やし、発言も増やせるようにしっかりと活動を主導していく必要があります。

ダイバーシティがポジティブであることは、今や間違いないことです。職場のマイノリティがどんどん活躍すれば、新しいアイデアも出てくるし、会社の中も活性化してくる。

雰囲気もガラッとオープンになり、フェアになる。

結局、多様性のある組織が強くなる、ということはすでにはっきりしていることです。世界の一流のグローバル企業の条件でもある。

心の中で否定している人がいたとしても、トップは絶対に諦めないことです。

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