【CASE1】親を巻き込み「夫の不倫動画上映会」
1歳年上の今の夫と27歳の時に結婚した会社員のK子さん(47歳)は、昨冬「好きな人ができた。離婚してほしい」と、夫から切り出された。翌春に高校を卒業する予定の子供が一人おり、突然の夫からの離婚宣言に動揺を隠せない。
「結婚して20年、仕事のことや子育てのことではいろいろぶつかることもありましたが、問題が起こるたびに夫婦で乗り越えてきたつもりです。まさかここにきて、夫の女性問題によって夫婦の危機が訪れるとは想像できませんでした」
それまで浮気の心配も一切なかった夫だけに、「好きな人ができた」という夫のひと言の重みと本気度を感じたというK子さんは「ちょっと時間がほしい……」と返すのが精いっぱいだった。「マジメで優しい夫に裏切られたこともショックでしたし、(私も会社員で収入はありましたが)今さらひとりで生きていく覚悟もありませんでした。とにかく、そのまま離婚に同意するわけにはいきませんでした」。
夫からの三くだり半に精神的なダメージは大きかったものの、別れたり泣き寝入りしたりするつもりはまったくなかったというK子さんはその後すぐに探偵を雇い、決定的な証拠を押さえるために夫の動向を監視した。夫は「好きな人ができた」と、あたかもこれから交際したいといったニュアンスで言っていたが、すでに交際しているのではないかとK子さんは疑ったのだ。
「はじめての浮気が本気になってしまった夫はガードが緩く、あっという間に相手の女性と密会している現場を押さえることができた」
「有利に離婚を進めるためではなく、修復のために探偵を雇った」というK子さんは、数週間後、子供が部活の合宿で不在のタイミングで、夫の両親と自分の両親を食事会という名目の下に自宅に呼び寄せた。お互いの両親と夫がリビングにそろったところで、「お食事の前に、ちょっとこれをご覧ください」とK子さんは70インチのテレビの大画面を使って動画を流しはじめた。それは、夫が浮気相手の女性と居酒屋で談笑しているシーンや、ラブホテルに出入りするシーンなど、明らかに夫の浮気を示す動画の数々だった。
一瞬で青ざめた夫以上の反応を見せたのは、70歳超の夫の両親だった。その場で土下座して謝ったという。「K子さん、ウチのバカ息子が本当に申し訳ない。ご両親にもなんとお詫びしたらいいのか言葉もない」と頭を床にこすりつける両親を見ているうちに、「僕はとんでもないことをしてしまった」と夫は涙を流しはじめたのだった。
「もともと夫は心根が優しく、『親孝行な息子』でありたいと思っているタイプ。だからこそ、両親が土下座をしている姿を目の当たりにしたら、気持ちが変わるんじゃないかと考えた」というK子さんの読みどおり、夫は浮気相手と会うことをやめるとその場で約束し、実行したのだった。
探偵を雇う費用は税込みで約110万円。痛い出費だったが、K子さんにとっては夫をつなぎとめるための「不倫動画上映会」という切り札には必要不可欠なものだったのだ。