――ハッカーの標的が多様化するとどういう問題が起こるのか。

デシーザー たとえば自動車メーカーは、車中でパソコンやスマートフォンがコードレスで簡単に使える「ホットスポット」化を進めている。それを逆手にとってハッカーが時速80マイルで走っている車のアンチロックブレーキシステムなどに攻撃を仕掛けてくれば、大きな事故につながりかねない。数年前はスマホにセキュリティをかける必要はなかった。スマホそのものには重要な情報が載っていなかったからだ。しかし最近は顧客データや製品化のためのデータ、R&Dのデータなどが取り込まれている。スマホ単体で企業の秘密情報にアクセスできる以上、そこもセキュリティをかけざるをえない。

――日本政府や企業の今後のセキュリティ対策の課題は何か。

デシーザー 日本政府や企業のセキュリティ対応が世界水準から遅れているかといえば、そんなことはない。ただどの国でもいえることは、重要なインフラに対してはしっかりとセキュリティをかける必要があるということだ。かつては攻撃といえば、国が持つ兵器システムに対するものだったが、今は兵器だけではない。電力会社や発電所に対する攻撃、水源に対する汚染、飛行機など公共の交通機関に対するハッキングもありうる。兵器よりももっと大きなインフラに対する攻撃がある。だからこそ十分な対応が必要だ。

――マカフィーはなぜインテルと資本提携を結んだのか。

デシーザー マカフィーは数年前からPC上で急増するコンピュータウイルス、悪意あるソフトウエアの対応についてインテルと一緒に取り組んできた。これからは、ソフトウエアがチップと密結合していなければいけないという基本的な考え方が私たちにはあったからだ。私たちはPCのセキュリティには強みがあり、法人、個人の顧客のアクセスした情報を収集することはできるが、当時周辺機器はまだ十分対応できていなかった。しかし今後の大きな成長の柱はこの周辺機器。私たちは共同開発を通して、インテルの販路を使って周辺機器の市場に進出することができ、組み込み系のOSを使ってかなり高いレベルのセキュリティを提供することができると考えている。

※すべて雑誌掲載当時

(松崎隆司=構成 澁谷高晴=撮影)