なぜ異動によって戦力化できたのか
最後に完璧主義者をうまく戦力化した例を挙げよう。受託製造専門会社の取締役、ヘンリー(名前はすべて仮名)は、ショーンという部下と15年以上付き合っていた。ショーンは優秀だが、自分の仕事を何度も見直したり、起きる可能性がほとんどない事態について「際限のない質問」をぶつけたりして、仕事の進行を遅らせていた。
ショーンは完璧主義者であることを誇りにしていたので、ヘンリーは彼を指導して行動を変えさせようと試みることさえできなかった。それでも、ヘンリーはショーンの物の見方や貢献を高く評価していた。「わが社にはその逆のタイプが多すぎた。だから、彼は釣り合いをとるおもりのような存在として役立つと思っていた」と、ヘンリーは語る。
やがて、ショーンにうってつけだと思うポジションに空きができた。細部に大きな関心を払わねばならない仕事だったので、社内にはそれを「レベルの低い」仕事とみなす者もいたが、ヘンリーはその仕事の重要性を理解していた。彼はショーンに、この仕事は君の強みにピッタリはまると思うと説明して、応募するよう勧めた。ショーンは同意し、まもなくそのポジションに移っていった。
「最適のポジションで、彼はすばらしい仕事をしている。彼が誰もやりたがらない仕事をしていることで、同僚たちは彼に敬意を払っている」と、現在は別のグループを監督しているヘンリーは語り、こう言い添えた。「四角い人間を丸い仕事に押し込もうとしてはいけないということを学ばせてもらったよ」