上にいけばいくほど、「完璧」はありえない
適切なポジションについていても、完璧主義者は、たとえば仕事の進行を遅らせるとか、同僚の士気をくじくといった問題を起こすことがある。
その厳しい基準が好ましくない結果を招いているときは、マネジャーは彼らがそれを認識する手助けをする必要がある。「彼らの自己認識が高まれば、彼らのマイナスの特質を抑えさせて、新しい視点に立たせることができる」と、デロングは言う。多くの完璧主義者が自分のやっていることを認識していない。認識していても、それを変えようという意欲は持ち合わせていない。「彼らはそれが自分のためにならないことは知っているのだが、短期的には変えないほうが楽なのだ」と、デロングは言う。
マネジャーは自分の目に映る彼らの行動を彼らに説明する必要がある。「私の見るところ、君はなにもかもちゃんとしたいと思う人のようだね」という具合にだ。さらに、彼らがそのマイナス面に気づく手助けをする必要がある。「まずまずというところで終わりにするのが好きな人間はいない」とキャプランは言う。だが、仕事にはたいてい妥協やトレードオフが必要だ。優先順位をつけて何が一番重要かを把握すれば時間と労力を節約できるということを、彼らに教えよう。
キャプランはさらに、完璧主義者の特質が、周囲から一様にプラスの評価を受けたり、マネジャーのポジションに昇進したりするのをどのように妨げるかを彼らに説明するべきだとアドバイスする。「もっと上のポジションについたら、完璧などというものはありえない」と、彼は言う。完璧をあきらめることが大きな目標を達成する方向への一歩であることを、部下に理解させよう。
直接的な批判が逆効果になる理由
すべての完璧主義者がコーチングできるわけではないが、可能ならやってみる価値がある。まず、自分が完璧主義者であることを自覚できるだけの自己認識を部下が備えているかどうかを確かめよう、とキャプランは言う。彼らは一朝一夕には変わらないだろうが、誰にも弱点はあることを肝に銘じて、辛抱強く待つ必要があるとキャプランは言う。「上司が自分のことを気にかけてくれていることがわかるだけで、変わろうという意欲を持つことがある」。完璧主義を乗り越えた人物を見つけて、メンター役になってもらうのも一案だと、キャプランは言う。
アドバイスするときは、明確な言葉で表現してはならない。完璧主義者にとって批判をきちんと受け止めるのは難しく、彼らの耳には否定的な言葉しか残らないだろう。まず、マネジャー自身の不安を伝えよう。デロングは、マネジャーが彼らにアドバイスを求めるというアプローチを勧める。
「君のパフォーマンスを高める方法についてどのような形で話し合えばよいかわからない。君にフィードバックを与える方法について、何かアドバイスしてくれないか」という具合にだ。これを肝に銘じておけば、彼らを自己防衛に走らせたり、彼らの意欲をそいだりしない形でアドバイスを与えることができる。「彼らはそれをきちんと受け取るはずだという希望と自信を持とう」と、デロングは言う。