日本は資本主義国家だと思っている方が大勢いるようだが、JPモルガン時代の私の部下の欧米人たちは、「日本は世界最大の社会主義国家だ」と言いながら帰国していった。日本で生活し、働いたうえでの感想だ。

社会主義国家が資本主義国家に負けるのは歴史が証明している。小さな政府にして税金を少なくし、民間主導の経済を作ることこそ必要だ。これが日本が「皆が平等に貧しい国」になってしまうことを回避できる唯一の道だ。

競争を促すこと、成功した人が大金持になれる税制も必要だ。成功しても成功しなくても、働いても働かなくても、皆、同じ生活ができる国家は成長しない。もちろん失敗者のためのセーフティーネットを確立したうえでの話である。

安定を得るために、経済が死にかけている

そして政府がすべきことは、終身雇用制を助長する税制を改め、金銭解雇ができる法律を整備することだ。よく「強者はそれでいいかもしれないが、弱者は仕事を失う」との反論を聞くが、そんなことは無い。

藤巻健史『Xデイ到来 資産はこう守れ!』(幻冬舎)

好景気で完全雇用が実現した状態であれば、1人が辞めるとその分補充が必要になる。雇用は常に開かれ、循環をしているだけだ。

労働者が経営者に対して「辞めるぞ」との武器を使えるのは転職市場が整備されていて、すぐに次の仕事が見つかる環境があればこそだ。だからこそ政府が、転職市場を整備し、完全雇用状態を守る経済政策を打つことが必要だと言っている。

これが労働者個人の収入を高めるとともに、日本の国際競争力向上でGDPを押し上げ、さらに個人の収入を引き上げることにつながる。

新型コロナの感染拡大の際に、日本政府は、真に保護を必要とする個人ではなく、企業に巨額の補助金を配った。ゾンビ企業を生き延びらせる政策を取った。

これでは非効率な日本が継続する。コロナ禍以前の水準にすら戻れないのも当然だろう。完全雇用制が崩れて転職社会になっていれば、個人への補助を考えればよく、ゾンビ企業を生き延びらせることもなかったはずだ。

私たちはそろそろ気づくべきだろう。正規社員の小さな安定を守る終身雇用が、非効率な経済を生み出しているのだ。

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