日本人の給料が増えない最大の理由

なぜ日本人の給料が増えないのかについて考えたい。

日本人の給料が増えない最大の理由は、30年間、日本のGDP(国内総生産)がほとんど増えていないからだ。米国3.7倍、英国3.3倍、豪州5.2倍、韓国8.5倍、シンガポール6.8倍、中国に至っては51.2倍(1991年VS2021年いずれも自国通貨ベース)にもなっているのにもかかわらず日本は1.1倍にしかなっていない。

数年前、オーストラリアの要人とこんな話をした。その人は「昔は日本から豪州に旅行に行く日本人の方が豪州から日本へ豪州人旅行客よりはるかに多かったが、今は逆転し、日本を訪れる豪州人の方がはるかに多い」と言っていた。

「円安のせいですか?」と聞いたら「いや、そうではない。為替はその当時のレベルとあまり変わりはない。豪州人の収入が増えて豊かになり、日本への旅行が安く感じられるようになったからだ」と答えてくれた。

東京スカイツリー
写真=iStock.com/YUJISTYLE
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日本のGDPが30年間でほとんど増えていないのに、豪州のGDPは5.2倍になっているのだから、その解説には納得がいく。

大雑把に言えば、日本人の所得が30年間ほとんど増えていないのに豪州人は5倍に増えているのだから日本旅行が安く感じられるようになるのは当たり前なのだ。

日本は昔の東南アジアになった

私が若い頃、東南アジアの人たちは収入が低いがゆえに慎ましい生活をしていた。だからなんでも安い東南アジアへ日本人が大挙して押し掛けたのだ。

今の日本は、かっての東南アジアの地位に墜ちつつある。安さを求めて外国人が訪日するのだ。訪日外国人は高級旅館に泊まり、日本人の国内旅行は安価なビジネスホテルに、となるならあまりに情けない。

この旅行の話からも分かるように、日本はGDP(経済全体のパイ)が大きくなっていないのだから、各人の分け前(一人あたりの所得)が増えないのは当たり前なのだ。

パイ全体が大きくなっていないのに、誰かの分け前が増えれば、他の誰かの分け前は減らざるをえない。ゼロサムゲームになってしまう。

ちなみに日本が巨大赤字国家になってしまったのも同じ理由でもある。

大雑把に言えば、GDPが2倍になれば国民一人一人も2倍豊かになり(=収入が2倍になり)、国も2倍豊かになる(=税収が2倍になる)。日本はGDPが伸びていないから税収も増えないのに歳出を2倍に増やしたがゆえに、巨額借金が溜まってしまったのである。

過大評価された日本円

日本人の給料が上がらなかった第2の理由は為替だ。

円が強すぎたがゆえに日本人の仕事を外国人に奪われてしまったのだ。労賃もモノやサービスと同じで需給で決まる。日本人労働者に対する需要が減少すれば賃金など上がるわけがない。