ウクライナ軍は最近、敵陣の背後にあるロシアの弾薬庫や司令部を攻撃し、一定の成果を上げている。

だが射程の長いミサイルの在庫は尽きつつある。しかもロシア軍は多方面に進出している。だからウクライナには、ロシアの重要な指揮・兵站拠点を素早く見つけ、精密兵器で確実に標的を破壊できるグレーイーグルのような航空機が必要だ。

もちろん、グレーイーグルがロシア軍に撃墜される可能性はある。しかし彼らの防空能力では、バイラクタルのような低速無人機に対応するのがやっとだ。しかも彼らのセンサーや迎撃ミサイルでは狭い空域しかカバーできない。

つまりドンバス地方での都市攻防戦には有効でも、ウクライナ南部の広い範囲や黒海の上空では役に立たない。

だからアメリカは、この戦争へのアプローチを変える必要がある。黒海の封鎖を解いて小麦を世界に届け、グローバルな人道危機を回避することの重要性は、ロシアがアメリカの軍事技術を手に入れるリスクをはるかにしのぐ。

ウクライナの海を封鎖しておけば、ロシア軍は地上戦でも圧倒的に優位に立てる。短射程の古典的な砲撃戦ならお手のものだし、弾薬はいくらでもある。だからこそ、今は陸と海の両方でロシアをたたく必要がある。

供与する武器の能力を制限し、戦闘をウクライナ領内に封じたい気持ちは分かる。だが、この戦争の影響は既に世界中に及んでいる。西側諸国の代わりにロシアと対峙しているウクライナは当初から、勝てるだけの武器をくれと西側に要請してきた。今はそれを、世界中が望んでいる。

From Foreign Policy Magazine

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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