人から「表情が明るくなった」と言われる理由
その考え方が変わったのは、たくさんの高齢者の方々を診察したり、自分でも様々な経験を重ねてきたことにあります。
社会的に認められる成功者となった人でも、何が不満なのか、いつもイライラとして不服そうな顔をしている人がいます。
あまり裕福ではなくても、ニコニコとして、楽しそうに毎日を過ごしている人もいます。
そんなご高齢の方々をたくさん診ているうちに、「人生には勝ちも負けもないんだな」と考えるようになったのです。
「人生を勝ち負けで判断しても、あまり意味はないな」
そう思うようになると、肩の荷が下りたみたいに、気持ちがスッと軽くなりました。
その影響なのか、最近では、人から表情が明るくなったと言われます。もしかすると、笑顔でいることが増えているのかもしれません。
人は明るい気持ちでいると、笑顔になります。笑顔でいれば、自然と明るい気持ちになれます。
それは、私が身をもって体験してきたことでもあるのです。
交通事故の示談のように、「7対3で勝てばいい」と思えるか
本書の第2章のストレスの項目で紹介した「逃げる」という選択を避ける傾向があることなど、まさに「勝ち負け」で物ごとを考えていることの象徴といえます。
「逃げたら負け」と思っているから、いくらストレスを溜め込んでも、何とかして我慢しようと無理をしてしまうのです。
人の人生は、「逃げたら負け」ではありません。
「逃げるが勝ち」でもありません。
大事なことは、勝ち負けではなく、結果的に「生き残る」ということです。
自分が生き残るためには、どうしたらいいか?
勝ち負けで考えていると、この最も大事な判断を見誤ることになります。
どうしても勝ち負けのクセが抜けないならば、「圧勝」を考えるのではなく、交通事故の示談のように、「7対3で勝てばいい」という発想を持つだけでもいいと思います。
完全に打ち負かそうとするのではなく、3割くらいは相手の言い分を受け入れるということです。
完全に打ち負かせば、相手は「敵」になりますから、ムダに敵を増やさないための余地を残すということです。
この「勝ち負けで考えない」というのは、精神医学の分野では最近のトレンディな考え方で、最近になって注目され始めた新しい視点です。
現代の日本人にとっては、非常に大切な考え方だと思います。