配当金の高い企業は資産形成には向いていない
ちょっとシミュレーションをしてみましょう。元本を100万円、毎年10%のリターンで、再投資するファンドAで30年間運用して利益が出たことで最終的に20%を課税すると、平均リターンは約9.2%になります。一方、配当を都度課税し、税引き後の金額を再投資し続けるファンドBの平均リターンは約8%になります。
つまり、税金は後回しにしたほうが、資産形成の効率が良くなるのです。キャピタルゲインを狙う投資では、このような「課税繰延効果」があります。
また、インカムゲインとして投資家に資金を吐き出している株式は、自社の成長のためにお金を投じていないので、成長性が乏しい可能性があります。安定感はあるかもしれませんが、資産を「形成」するには向いていません。
これらの理由から、投資の神様、ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイも無配にしています。配当を出して税金を取られるくらいなら、事業拡大の資金に回したほうが、投資家のためになるということですね。世界一、投資家の目線を理解した経営者ともいえるバフェット氏が、いかにキャピタルゲインを重視しているかがわかります。これは片腕であるバークシャー・ハサウェイ副会長のチャーリー・マンガー氏の影響もあるのかもしれません。
投資額が大きければ配当で生きていける
一方で、年間数%のインカムゲインは、資産をこれからつくるにはもの足りませんが、すでに大きくなった資産を運用していくには、十分な数字だったりします。インカムゲインを頼りにする投資は、投資額が大きければ大きいほど向いているのです。
仮に配当利回りが4%だとすると、投資額100万円なら、年間4万円にしかなりません。確実性があるといっても、これでは子どものお小遣いです。しかし投資額5000万円なら、年間200万円。田舎で1年間、一人暮らしの生活なら送れそうです。
また、配当はタイミングを気にする必要がないというメリットもあります。キャピタルゲインによる収益はどこかで銘柄を売却しなければ上がらないので、タイミングを気にせざるを得ません。その点、配当は期日になれば決まった金額が振り込まれます。間違ったタイミングで取り崩しをしてしまう心配もありません。心を穏やかに過ごせるということは、投資における一つの重要指標です。