メルボルン大学のサラ・ミジャー講師(国際関係学)は同紙に、「戦争犯罪とは、故意の非人道的な扱いおよび民間人への重大な加害(など)を指し、これは軍の戦略として行われたか否かを問題としません」と説明している。「したがって、同軍の作戦中に構成員が行ったあらゆるレイプは、戦争犯罪の定義を満たすと考えられます」
ロシア軍がウクライナの地で及んだ蛮行が巡りめぐって、将来的にはプーチンとロシア軍幹部らの罪が問われる可能性も、皆無ではないようだ。
大々的に報じられる戦況の裏側
ウクライナのロシア支配地域に残された弱い立場にある人々は、残虐行為に日々怯えている。物資不足で医療と医薬品が限定されるなか、望まぬ妊娠は切実な問題だ。
欧州国際法ジャーナルは、記事で「ロシア兵によるレイプなどで妊娠した女性がいる」と指摘している。中絶薬の流通が限られていることから、意図しない妊娠と出産を迫られる懸念がある。
また、ウクライナ難民の多くがポーランドへ越境しているとしたうえで、避難先では厳格な中絶禁止法が施行されているという。かといって出産を試みようにも、戦災によるストレス下では早産や死産のリスクを無視できない。
なお、加害者には一部、ウクライナ兵も含まれえるようだ。ワシントン・ポスト紙が6月8日に報じたところによると、ウクライナ国連人権監視団はこれまでに124件の性暴力被害の申し出を受理し、うち24件について確認が取れたと発表している。
24件のうち、ロシア兵または関連集団によるものが半数の12件を占め、犯人不詳が7件となった。一方で残りの5件は、ウクライナ兵による事件となっている。
日々のニュースで報じられる戦況の一方で、戦場となったウクライナで暮らす市民が性的暴行を受けている。これが戦争の実態なのだ。ウクライナでひとつの都市が陥落するたび、少なくない数の被害者が声を上げられずに新たに心の傷を負っているのかもしれない。
戦争で苦痛を強いられるのは、いつも弱い立場にいる人であることを忘れてはいけない。