目の前で夫を殺され、レイプされた女性
暴行は首都近郊でも発生している。キーウ近くの村に住む43歳女性は、まだ息子ほどの年齢の19歳ロシア兵士に夫を殺され、性暴力を受けた。米ニューヨーク・タイムズ紙が報じている。
ロシア軍が首都近郊に迫っていた3月のとある晩、女性はノックの音を聞いた。3人の酔ったロシア兵が自宅に押し入ってきたという。立ちはだかった夫は、その場で射殺された。女性は銃を突きつけられたまま、隣人女性とともにロシア兵らの拠点へ連行され、そこで性的暴行を受けた。
彼女が尋ねたところロシア兵は、祖国に17歳のガールフレンドがいると答えたという。ガールフレンドとは性的関係をもったことがないとも語っており、欲望のはけ口をこの女性に求めた模様だ。
同紙の取材に対し、女性は悔しさを滲ませる。「彼は残忍で、私を女性でも母親でもなく、売春婦として扱いました」「私をレイプし、冷酷にも私の目の前で夫を殺したのです。プーチンと一緒に死ねばいいんです」
彼女は夫の撃たれた家を離れたが、いまもなお同じ村に住んでいる。小さな村で噂は巡り、彼女と彼女の夫に何が起きたのか、村じゅうが知っている。力なく彼女はつぶやく。「(事件のことを)考えなければ生きていけます。だけど、忘れることなんてできない」
断っていたタバコに、また手が伸びるようになった。いまでは鎮静剤も欠かせない。「この戦争は、みんなの精神を壊したのです」
公然と行われるレイプ行為
ロシア軍によるこうした性暴力は公然の秘密となっているのだろうか。
米議会が出資する放送局のラジオ・フリー・ヨーロッパは4月、ウクライナ当局が傍受したロシア軍による通話のなかに、本国の妻に対して堂々とレイプの許可を求めるものがあったと報じている。ウクライナ入りした若いロシア兵が祖国にいる妻に電話をかけ、集団暴行への参加をほのめかしたところ、妻は朗らかに「了解、許可します。でも避妊具は使ってね」と応じたという。
メリンダ・シモンズ駐ウクライナ英国大使は、レイプがロシア軍の武力行使手段の一部になっていると指摘も出ている。同記事によると、メリンダ・シモンズ駐ウクライナ英国大使は、次のように語っている。
「ウクライナにおける状況の全容はいまだ不明ですが、それ(レイプ行為)がロシアの武器庫の一部を担っていることは明らかです」「女性が自身の子供たちの目の前で犯され、少女たちは家族のいる場でそうされ、故意に服従させられているのです」