ケミカルHDの主要3社(三菱化学、三菱レイヨン、三菱樹脂)の人事が発表されたのは11年12月26日、暮れも押し詰まった時期だった。
「大震災やソブリンリスク等の困難を克服し、不確定・不透明な時代とはいえ、2015年度には売上高5兆円、営業利益4000億円という高い目標を掲げて、グローバルで戦える企業グループを目指す」
挨拶に立った小林の口から出てきたのは、どんな日本の化学メーカーも、今まで到達したことのない数字ばかりだった。
「仕事師を選んだんだよ。みんな間違いない、必殺仕事人ばかりですよ」
今回の人事の狙いを尋ねられると、小林はわが意を得たりとばかり、こう答えた。発表された人事は、小林の「ゆでガエルに蛇を入れる」そのものだった。
12年4月から、三菱化学社長には、現同社専務執行役員の石塚博昭が就任し、三菱化学の経営戦略部門の担当役員だった越智仁が、三菱レイヨン社長へ転出する。三菱レイヨンのナンバーツー、姥貝卓美取締役専務執行役員が、三菱樹脂社長となり、ケミカルHDと三菱化学の社長を兼務していた小林は、ケミカルHDの業務に専念する。
(文中敬称略)
※すべて雑誌掲載当時