コロナで死亡? 臆測が飛び交った

詩織さんが亡くなった事実だけを伝えた1月14日の臨時保護者会の帰り道、保護者たちの間では臆測が飛び交った。

「学校があるのは、学年の半分くらいが中学受験をする受験率が高いエリアです。1月14日は、1月受験が始まる3日前。なぜ、こんな時期に発表するのか、受験生の親子を動揺させたいのかと怒っている保護者もたくさんいました」(加藤さん)

別の保護者も言う。

「理由が話されなかったので、コロナで亡くなったのでないか、いや、詩織ちゃんはいじめられていたから、自殺ではないか、交通事故なのか、といろんな臆測が飛び交っていました」(鈴木さん/仮名)

翌日には学校で全校児童に伝えられた。6年生にはA校長から、それ以外の学年はクラス担任が、14日と同じ内容を伝えた。つまり、「遺族の意向で、亡くなった理由は伝えられない」ということだ。このため子供たちが学校で詩織さんの話をすると先生に「シーっ」と注意された。

「理由を言わなかったので、子供たちは余計に混乱状態に陥っていました。詩織の友達だった低学年の男の子がうちに来て『なんで詩織ちゃん死んじゃったの?』って聞きにくるし、問い合わせの電話がたくさんかかってくるし、誰にも聞けずに家で泣いているとお母さんたちから話を聞くお友達もいるし、子供たちが本当にかわいそうでした」(母・弘美さん/仮名)

空手を習っていて、大会では上位入賞をしていた詩織さん(仮名/写真右側)。いろんな課外活動に参加していて、同級生以外にも友達は多かった(写真=母親提供)

翌日、臨時保護者会が開催されたという話を聞いて驚いたのはPTA会長だ。

「A校長から臨時保護者会を開くことや、子供たちに伝えることは何にも聞かされていませんでした。保護者の皆さんからPTAに問い合わせがたくさん来ていたので、16日に校長室を訪ねて、『いじめで亡くなったという噂があるけど本当ですか?』とA校長に聞きました。すると、『いじめはあった。だけど、9月に解決していて、亡くなったことは関係ないんです』、そして、『本当のことを伝えたいけど、遺族の方の意向で伝えられなかった』と説明を受けました。私が、問い合わせがたくさん来ていると伝えたら、『では、1月19日に代表委員会があって各学年の代表の方が来ているから、伝えましょうかね』と提案いただいたんです」(PTA会長)

 

遺族は「代表委員会」への出席も止められた

1月19日、クラス委員とPTA役員の保護者が集まる「代表委員会」の席で、詩織さんが亡くなったことを伝えることになった。それを聞いた山根夫妻は、「今度は自分たちも出席したい」と申し出たが、A校長は「来ないでください、なんで来るんですか⁉」と出席を止めたという。

「ひと言、あいさつをさせていただくだけなので、参加させてくださいと頼んでも、『いやいや大丈夫です。混乱するだけですし、そもそも代表委員会は詩織さんが亡くなった話をするための場所ではありませんし』と大変なけんまくでした」(弘美さん)

18日の夜、A校長はPTA会長を呼び出した。

「A校長に呼ばれて、夜7時に学校に行きました。そして、『山根さんが代表委員会に出ると言っています。困りますよね、そんなことをされたら』と聞かれました。『いえいえ、別に何も困らないです』と伝えたら、『まだ本当に出席するかわからないので、山根さんにこのあと連絡を入れますね』と言われました」(PTA会長)

実際にはA校長から山根夫妻への連絡はなかった。翌朝、山根夫妻が改めて出席の意向を伝えると、A校長は「来ないでください」の一点張り。それでも山根夫妻は、代表委員会に強行突破で出席することを決めた。