どこの誰かもわからない会社に運営権が渡る恐れも…

この一点からも、コンセッション方式が地方自治法にある「指定管理者制度」を活用した業務委託やアウトソーシング(外部発注)とはまったく次元の異なるものであることがわかるだろう。コンセッション方式では企業の判断によって、他者に「運営権」を売り払うこともできるのだ。

ある会社を信頼して水道事業を委ねていたのに、気づけばどこの誰かもわからない別会社が「運営権」を手中にすることもあり得る。これでは安定した水の供給は危うい。

ところが、水道法改正の審議で、安倍政権は繰り返しこう答弁してきた。

「改正水道法がめざすのはコンセッション方式であって、民営化ではない」

コンセッション方式では水道施設の所有権は自治体に残る。したがって、世論が懸念する民営化などではないと、政府は言い繕いたいのだろう。だが、コンセッション方式とは「運営権」の取り扱いだけをみても、その内実はずばり、民営化そのものなのだ。

世界では再び公営化の波が押し寄せている

だが、世界に目を転じるとまったく違う光景が出現している。水道の民営化が行われている国々で、再公営化の波が押し寄せているのだ。フランス、ドイツ、アメリカ、カナダ、マレーシア、アルゼンチンなど……。しかもその速度が二〇一〇年以降加速している。

再公営化とは民間企業による事業から公的事業へと、公共サービスを市民の手に取り戻すことである。民間企業による資産所有やサービスのアウトソーシング、PPPなど、さまざまな形態で民営化された公共サービスを公的所有、公的な管理、民主的なコントロールに戻す道筋と言ってもよい。

私の所属する政策NGO「トランスナショナル研究所」は、世界の水道の再公営化の事例がいくつあるのかを二〇一五年にはじめて調査した。

調査の目的のひとつは世界銀行グループの調査に対抗することだった。官民連携を積極的に推進する世界銀行グループは、PPPプロジェクトがどれだけ広く採用されているかを示すデータベースなどを作って情報を発信しているのだ。

だから、その逆の流れ、再公営化の潮流が実際には目立ってきていることをデータで示すことが重要だったのだ。そしてまずは水道事業について調査しようというのが私たちの試みだった。

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