では、未来思考のための特別な方法論は必要ないのでしょうか? 本当に、未来のステークホルダーを招いて、じっくりと対話をすれば、それで必ず変化が起きるのでしょうか? この点を何度もハンクに問われ、何度も考えました。そして、「対話が未来を創ることに間違いはない」が、同時に、「未来思考の方法論がなければ突破できない複雑な問題も、数限りなくある」ことを認めるに至りました。

未来思考の方法論がもたらす本質的な価値は、「複数の未来シナリオへの集団的意識が、現在のしがらみから私たちを解き放つ」ことなのです。

どれだけ多様な人たちを集めたとしても、私たちの集団的意識が、現状のしがらみに絡め取られていたならば、それを乗り越えることはできません。たとえば、「創造的なオフィス」を検討しているときに、「オフィスがなくなる」というシナリオを考えてみることで、ブレークスルーが起きることがあります。シナリオ思考をつねにフューチャーセンターの核となる方法論に据え付けておくことで、将来のオプションを増やし、そこから現在の取り得るアクションのバリエーションを広げていくことができるようになるはずです。これが、未来思考の方法論が必要な理由です。

ハンクからは、もう一つの疑問が提示されました。「対話をすることで、本当にアクションが起きるのでしょうか? 対話だけで終わってしまうものではないでしょうか?」という点ですそこでもう一つ忘れてはならないものとして、デザイン思考の方法論を加えたいと思います。

デザイン思考の方法論の本質は、「プロトタイピング作りで一緒に手を動かすことで、協調的アクションが生まれる」ことです。

フューチャーセンターを運営する、フューチャーセンター・セッションを開催する、このどちらにも共通することだと思いますが、ぜひ、これら3つのタイプの方法論を理解し、必要に応じて組み合わせて使っていけるようにしていただければと思います。

フューチャーセンターの方法論:

1)対話の方法論
相互理解・信頼の関係性を構築する、異質から気づきを得る、内省や思考を深める
例えば、ワールドカフェ、OST、AI、フィッシュボウルなど

2)未来思考の方法論
複数のシナリオを想定する、未来からバックキャストする

例えば、未来スキャニング、シナリオプランニング、フューチャーサーチなど

3)デザイン思考の方法論
体験から学ぶ、作りながら学ぶ、形にしてみることで改善し続ける

例えば、ユーザ観察、ブレインストーミング、経験プロトタイピングなど

これらフューチャーセンターの方法論について、ノウハウを整理して世界中のフューチャーセンター間で学び会える仕組みを作っていこうと考えています。