④女性の閉経と卵子の関係についての本当のこと

女性は閉経すると、老化の過程をまざまざと実感させられる。ほとんどの動物は生殖能力をなくすとほどなく死んでしまうが、人間の女性は(もちろんありがたいことに)人生のおよそ3分の1を閉経後の状態で送る。

ヒトは閉経を経験する唯一の霊長類で、ほかの動物たちの中でもきわめてめずらしい存在だ。メルボルンのフローリー神経科学・精神衛生研究所は、ヒツジを使って閉経を研究している。単純に、ヒツジはヒトと同じく閉経することが知られているほとんど唯一の陸上動物だからだ。少なくとも2種のクジラも、同じ経験をする。なぜこの数種の動物が閉経するのかは、まだよくわかっていない。

困ったことに、閉経期はひどくつらい場合がある。約4分の3の女性が、閉経期にホットフラッシュを経験する(理由はよくわかっていないが、ホルモンの変化に誘発されて、たいていは胸から上に突然のほてりを感じる症状のこと)。

閉経はエストロゲン産生の低下と関連しているが、現在でもその状態をはっきり確認できる検査は存在しない。ウェルカム・トラストのウェブマガジン「モザイク」に寄稿されたローズ・ジョージの記事によると、女性が閉経期に入りつつあるとき(閉経周辺期と呼ばれる段階)の最上の指標は、月経が不規則になること、そしてしばしば「何かがしっくりこない感覚」を味わうことだという。

閉経も、老化そのものと同じく、なぜ起こるのか謎だ。

おもにふたつの説が提示されていて、「母仮説」と「おばあさん仮説」というなかなか気の利いた名称で知られる。母仮説によれば、女性が年を取ると、もともと危険で困難な出産が、もっときびしくなるからだという。

つまり、閉経は単なる保護戦略のようなものかもしれない。女性は、もう出産で消耗したり気を散らされたりせずに、自分の健康維持に集中できるようになり、子どもが最も充実した年齢になるときに子育てを終えられる。これは、自然に「おばあさん仮説」へつながる。女性が中年期に閉経するのは、子どもがその子どもを育てるのを助けるためだという説だ。

ちなみに、女性が卵子の蓄えを使い尽くすことで閉経が起こるというのは、つくり話だ。卵子はまだある。確かに多くはないが、妊娠するのにじゅうぶんすぎるくらいにはある。つまり、閉経の過程を引き起こすのは、文字どおりの卵子の枯渇ではない(多くの医者でさえそう考えているようだが)。具体的に何が引き金になるのかは誰にもわからない。

⑤110歳まで生きる確率は700万分の1

ニューヨークのアルベルト・アインシュタイン医学校による2016年の研究では、どれほど医療が進歩したとしても、115歳を超えて長生きする人は少ないだろうという結論が出た。

一方で、ワシントン大学の生物老年学者マット・ケバラインは、現代の若者が、ごくふつうに今の寿命より最大50パーセント長生きするかもしれないと考え、さらにカリフォルニア州マウンテンヴューのSENS研究財団の主任研究員オーブリー・デグレイ博士は、今生きている人の中には千歳まで生きられる人がいると信じている。ユタ大学の遺伝学者リチャード・コーソンは、少なくとも理論的には、そのくらい寿命を延ばすことが可能だと示唆した。

ひとつ言えるのは、今のところ、100歳まで生きる人も約1万人にひとりしかいないということだ。それ以上生きる人については、あまり人数がいないせいもあって、よくわかっていない。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の老年学研究グループは、世界のあらゆるスーパーセンテナリアン――つまり110歳の誕生日を迎えた人――をできるかぎり追跡調査している。

しかし、世界の大半の記録がずさんなのと、多くの人がさまざまな理由で実際より年寄りだと思ってもらいたがるので、UCLAの研究者たちは、この最高級会員制クラブへの入会希望者を承認することには慎重になりがちだ。通常は約70人の確証のあるスーパーセンテナリアンがグループの名簿に記録されているが、おそらくその数は、世界じゅうにいる実際の数の半分ほどにすぎないだろう。

あなたが110歳の誕生日を迎えられる確率は、約700万分の1だ。女性であることは、かなり有利になる。男性より110歳に達する可能性が10倍高い。

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興味深いことに、女性は昔から男性より長生きしている。男性はお産では死なないことを考えると、少し不思議な感じがする。しかも、歴史の大半を通じて、男性は病人の看護で接触感染する機会も少なかった。それでも歴史のあらゆる時代、調査されたあらゆる社会で、女性は常に、男性より平均で数年長生きしてきた。そして現在、ほぼ同一の医療を受けていても、やはりそれは変わらない。