「炊きたてのご飯」がダイヤモンドよりも輝いて見えた

私の場合は、その質問への答えは決まっています。「炊きたてのご飯で握ったごま塩のおにぎりが食べたい」です。

戦争中、まったく食べるものがなくて、小学2年生のとき、毎日毎日お芋のつるを入れたうどん粉の雑炊、「すいとん」を食べさせられて、「お米のご飯が食べたい! 食べたい!」と大泣きをした、そういう記憶が鮮明に残っているからです。

東京から山形県米沢市の父方の祖母の家に疎開していたときの話です。

湯川れい子『時代のカナリア』(集英社)

そうやって泣いていると、近所の若いおかみさんが「かわいそうに」と言って、塩おにぎりを握って持ってきてくれたのですが、まあ、そのおいしかったこと‼ 世の中にこんなにおいしいものがあるのかと思って、涙をこぼしながら食べたものです。

当時はお米がおいしい山形でさえも、働き手は全員戦争に取られて、わずかにできたお米はすべて国に供出させられていたので、私たちには麦やときたまのお米の配給しかなく、おかゆさえ食べられなかったのです。

ですから、「炊きたてご飯の塩むすび」。それが私にとっては生涯最高のごちそうになったのでした。

お米がきらきら粒立っているような炊きたてのご飯は、ダイヤより貴重な宝石のようで、戦争の記憶とともに、日本人としての私の食の原点になったと思っています。

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