米軍が現実視する「中国軍による基地攻撃」のリスク

台湾と中国間で高まる緊張は、日本人にとってもひとごとではない。新アメリカ安全保障センターは、最近実施したシミュレーションにおいて、戦闘のごく初期段階において中国側が、在日米軍基地に直接攻撃を仕掛けると見込んでいる。CNNは、「この模擬戦争は、中国軍がグアムや日本などにある近場の米軍基地を叩くことから作戦を開始する展開をシミュレートした」としている。

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在日米軍基地への先制攻撃により、中国は米軍の出撃を遅らせ、台湾攻撃を進める時間を稼ぐことが可能となる。米空軍本部のヒノテ中将はCNNに対し、中国軍が米軍基地に不意打ちをらわせるおそれは十分にあるとの認識を示した。中国が保有する各種弾道ミサイルは、少なくとも純粋な射程という観点では、近隣の米軍基地を攻撃する能力を有する。

米軍はこのリスクを、現実のものと受け止めているようだ。グアムのアンダーセン空軍基地が破壊されるという非常事態に備え、代替基地の建設に動き出した。米ワー・ゾーン誌は6月15日、中国が同空軍基地を「壊滅」させた場合に備え、米軍が大規模なバックアップ施設の建設に着手したと報じている。

建設先はグアム本島から北東に約170キロ離れたテニアン島の国際空港の敷地内だ。同誌によると計画は10年前から存在したが、今年5月になって建設が本格化した。

グアム防衛論は、ここ数カ月で盛んに議論されるようになった。米防衛・安全保障専門誌の『ディフェンス・ワン』は5月、「グアムはミサイル防衛の強化を必要としている……早急に」との記事を掲載した。記事は、米軍がグアムに重要な潜水艦施設および大規模な空軍基地を有することを念頭に、「グアムが中国にとって魅力的なターゲットであることは容易に理解できる」と論じている。

日本の米軍基地をグアムと完全に同列に論じることはできないが、少なくとも米軍は有事のシナリオとして、台湾へ到達可能な周辺地域の基地を中国が破壊する危険性を視野に入れているようだ。

中国共産党紙の編集長は自信「アメリカと台湾を完全に圧倒」

中台間の緊張は高まるばかりだ。米ワシントンD.C.に本部を構える中東報道研究機関は、中国共産党傘下のグローバル・タイムズの錫進しゃくしん編集長が5月23日、自身のブログにおいて非常に攻撃的な記事を掲載したと報じている

問題の記事において胡氏は、「台湾の軍事的支援に固執するならばアメリカは、PLA(中国人民解放軍)との直接衝突という紛れもないリスクに直面することになる」と警告を発した。

胡氏はさらに、「さて、今日の人民解放軍はどうだろうか? わが海軍と空軍の総火力は台湾海峡において、アメリカと台湾の海軍・空軍の火力の合計を完全に圧倒することができる」と述べ、中国側の兵力に大きな自信を示している。