中学生を勧誘するにはインスタはいいツール

現指導体制は4年目。磯岡がかつて府立枚方津田高校野球部の監督時代、非常勤講師で野球部コーチをしていたのが大槻だった。

大槻は後に教員に正式採用され、2019年に府立野崎高からなぎさへ磯岡と同時期に異動になった。

磯岡は地域の少年野球チームの指導をしていたこともあって、高校の監督を希望していた大槻になぎさの監督を任せたのだという。

その少年野球がひと段落して、磯岡はなぎさに注力できるようになった。休日も練習に出てこられるようになったし、インスタグラムのアップなど側面支援する。

中学生に知ってもらうにはSNSはいいツールになる。

「マネジャーが写真を撮って、私が文章を考えて投稿する。中学生は圧倒的に写真、インスタを見てるようです。高校生もスマホの中で生きてる。うちの野球部のPRもあるけど半分は部員のために書いてるんです。こんなことしたと振り返ってもらうために。ミーティングより効果があったりします」

撮影=清水岳志
府立枚方なぎさ高校の野球部マネジャーの2人(右が主務を兼ねる松本さん)

教員になりたての頃、野球は人気があった。枚方津田ではマネジャーを含めて67人が在籍したことも。ベンチに入れなくて泣く3年生がいた。

今は真逆な状況だ。野球をやりたくて公立にくる生徒は減る一方。枚方津田も近所の牧野も交野も四條畷も部員数が大幅に減っている。

8人では試合にならないので、実は卒業間近の3年生に助っ人を頼んで3月の練習試合を乗り切った。

「事前に声をかけてました。あいつら、“いいですよ”って喜んできてくれました。相手の監督にも“3年ですが今日は参加させてください”って、自らあいさつに行った(笑)」

試合に野球部員ではない帰宅部から助っ人を呼ぶことも可能だ。たぶん、来てくれるという。しかし、正式な部員はどう思うか。複雑な感情で一体感が生まれるとは思えない。

ならば、一度辞めた部員の復帰も磯岡は考えた。高校の2年半の部活期間中に、いろいろな事情で練習を続けられない、辞めたい時期は誰にも1度や2度はあるものだ。

「部活はどこかの段階で穴があってもええと思ってるんですよ。最終的にグラウンド、球場にいればゴールできたと思うんです。『戻って来たらどうやねん』と言いました。でも、現役部員はそれを快く思ってないんです。『あいつらは自分の意志で辞めると言ったんだし』と。監督もそういう意見なんです。グラウンドを一度、去ったものだしと。確かに僕はそうした意見も大事やと思います。思いますが、辞めた子を野球に戻してやったら、また伸びるかもしれないし、人間的にも成長するかもしれない。そんなことも思うんですわ」

残った部員は「新年度、入ってくる1年生と一緒に勝負したい」と言ったそうだ。