「チーム存続」のために奔走する44歳の野球部顧問
高校野球二極化……。強者と弱者が日々、速度を上げて選別されている印象がある。
今春のセンバツ甲子園で地元・私立大阪桐蔭は2ケタ得点の試合を続けて優勝した。「強すぎる」「優秀な中学生が集まりすぎる」といった声も聞かれたほどだ。
片や、なぎさは大阪桐蔭と対極にある府立高校だ。部員が集まらないためにチーム力も向上しない。公式戦でなかなか勝てないから知名度も上がらない負の循環。
「動画を見ると楽しそうなのに、なんで部員が少ないんですか、と勧誘した生徒に痛いところを突かれたことがあって、まだブランド、魅力がないんです、と言うしかなかった」
磯岡は苦笑いだ。
部員が入ってこない根本は何か。それは1学年240人のうち、女子が7対3で多く、男子が100人弱という点が大きい。男子が60人弱という学年もあったという。
なぎさ高校は2つの高校が統廃合されて2002年に設立された。芸術系、看護系の特徴あるカリキュラムを設けていて、女子が多くなる。
数年前まで、なぎさはいわゆる“やんちゃ”な学校で化粧をする女子も少なくなかったという。それが統合後、徐々に生徒の質が変わって大人しい生徒が増えたのだという。
「やんちゃくれだった時は、部員はパワーあるし、粗削りやけど能力高いなという子が混じっていた。今はまじめな子が増えた。転換期をどう乗り越えていくかが課題なんです」
男子の中には中学でシニアやボーイズリーグの硬式野球をやっていた者もいないわけではない。
だが、彼らは中学まで週末もどっぷり野球に浸かっている。高校では部活に入らず“帰宅部で余った時間はバイトしたい”という子も多い。
部員不足に加えて、ハードも問題だ。
大阪で1、2と言われる狭いグラウンドなのだ。バックネットもなく、マウンドの盛り上がりもない。バッティングゲージはお手製。グラウンドを共有するサッカー部のゴールは一塁ベースのすぐ横に置いたままだ。
「陸上部が『走らせてもらっていいですか』って言ってきて、練習中にベースをどけて、2本走らせて。ありがとうございます、って言われて。ベースを戻してノックのやり直し(笑)」
サッカー部とは平日は共有して、休日の午後は野球部が全面を使える。公立ではごく当たり前な面があるとはいえ、やりくりが大変だ。