LINEがいつの間にか議論や社長の悪口の場に

LINEグループがきっかけで関係者が懲戒処分されるというパワハラに発展してしまったケースがあります。Hさんのケースと同様に上司がLINEグループを作ったケースです。東京都内の企業に勤めるAさん(女性・28歳)が所属する部署のLINEグループは、当初「連絡が取りやすいから」という理由で上司のB氏(男性・48歳)が作ったそうです。

最初は事務連絡に終始していたのですが、「もっとアイディアや情報を共有しよう」ということで単なる事務連絡から個々の意見交換の場となっていき、時としてメンバー同士でケンカになりそうなほどの議論を交わすケースもあったそうです。

そんな状況に気を良くしたB氏は次第に経営方針や社長に対しての意見をグループ内で書き込むようになり、誹謗ひぼう中傷に近い内容も散見されるようになってきたそうです。B氏から「おまえらどう思う?」とメンバーに対して意見を求めることも増えていき「正直、怖くてしょうがなかった」とAさんは話します。いわゆる既読スルーでやり過ごしていたところ、「Aはこの件についてどう考えているんだ?」とあるときLINEグループにB氏から名指しで書き込まれました。

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既読スルーでやり過ごそうとすると「何か意見を書けよ」

この件についてもAさんは既読スルーにしました。LINEグループの場合は、誰が既読したのかわからないので、気づいていないふりでやり過ごそうとしたのです。ところが、Aさんからの意見が出ないことに業を煮やしたB氏はグループではなく直接AさんのLINEにメッセージを送ってきました。

どう返事をしていいかわからずに悩んでいるAさんにB氏は「Aは今のままの会社でいいのか?」「俺に賛同しろとはいわないが何か意見を書けよ」「おい、既読してるなら返事しろよ」といったメッセージが立て続けに送られてきました。そうこうしているうちに、B氏はグループに「Aはまったく協調性がない」「何も意見を言わないような人間は俺の部下にいてほしくない」などとAさんを誹謗中傷する書き込みをはじめ、最終的にAさんはそのグループから外されてしまいました。

その後、B氏はAさんに対し「反省したらグループに戻してやるよ」と個人LINEにメッセージを送信。Aさんは「今でもLINEの着信音が鳴ると怖くてたまりません」というように、その後メンタル不全に陥ってしまい、会社を休職することとなりました。休職の際に、会社の人事部や産業医と面談をして本件が発覚し、B氏は地方の支社に転勤のうえ、降格処分となったそうです。

B氏は非常に仕事熱心で、入社以来、現場の第一線でまじめに働いていました。自分の仕事への熱が部下に伝わらないことに苛立ち、本人に自覚がないままパワハラに発展してしまったケースです。仕事熱心な人ほどパワハラを引き起こしやすいのではないかと考えさせられる事件でした。