「企業家を見抜く」孫氏の眼力が問われている

また、世界的な供給制約の深刻化によって半導体などの部品や資材の不足にも拍車がかかり、企業の業績懸念が高まっている。リスク削減に動く投資家は増える。その裏返しとして、米国ではリーマンショック後から昨年11月末まで、世界的な低金利環境下での利回り確保のために需要が増え続けたジャンク債(信用格付けがBB以下の社債など)の価格が下落基調だ。ジャンク債の価格には投資家のリスク許容度の変化が機敏に反映される傾向にある。

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今後、世界的に株価はさらに下落する可能性が高い。それによって、経営体力が相対的に小さいスタートアップ企業の収益と財務内容の悪化懸念は追加的に高まる。また、ソフトバンクグループの資金調達を支えてきた中国のアリババ・グループは共産党政権の締め付け強化に直面している。中国では強引なゼロコロナ政策と不動産バブル崩壊の深刻化によって内需も急速に冷え込んでいる。

孫正義氏の眼力によって企業家の資質を見抜き、いち早く投資することによって成長してきたソフトバンクグループへの逆風は強まるだろう。

半導体設計・英アームの事業運営にかかっている

世界経済の環境はより劇的に変化するだろう。その中でソフトバンクグループはリスク管理を強化し、キャッシュを積み上げなければならない。別の言い方をすれば、ソフトバンクグループは世界経済の環境変化にしっかりと対応できる企業と、そうではない企業の見極めを急がなければならない。

環境変化に対応する力のある企業の一つとして注目されるのが、英国の半導体設計の大手企業であるアームだ。ソフトバンクグループはアームの上場によって収益を確保しようとしている。2021年、アームの収益は増加した。やや長めの目線で考えると自動車の電動化や人工知能(AI)の利用増加などによって、先進のICチップ需要は増加基調で推移するだろう。

ソフトバンクグループは先端分野で世界的な競争力を発揮しているアームの事業運営体制を強化すべきだ。特に、半導体設計の専門人材の獲得を支援することは、新しい半導体需要の創出に欠かせない。