口コミだけで広まった「特異性」と「快適さ」
新しくオープンしたホテルは、当然のことながらホテルガイドにはまだ載っていない。今だったら新築のホテルほど人気になるけれども、インターネットがない時代はその情報が行き渡らないので、逆に予約が取りやすい穴場となっていた。そこに泊まった同僚がパンフレットのコピーを挟んでおいてくれたり、さらに細かい情報を書き込んでくれたりしていた。まさに出張の救世主である。
その流れで「大阪に新しいホテルができた」という話から始まり、「ビジネスホテルなのに大浴場がある」「部屋が広めで畳の敷かれた小上がりまである」という衝撃的な情報があっという間に出張族のあいだで拡散されていった。
それこそが当時、大阪市の大国町にオープンしたばかりのドーミーインだった。アナログ時代に口コミだけで広まった「特異性」と「快適さ」。一瞬にしてドーミーインは知る人ぞ知る存在として高い評価を得ることとなった。
ビジネスホテルを変えた「大浴場」の存在
ドーミーインに泊まる理由のひとつとして、「大浴場があるから」と答える人はかなり多いと思われる。
以前は大浴場が付いているビジネスホテルの存在は、本当に稀だった。温泉地に近いビジネスホテルや、宿泊料金のお高いホテルや民宿、あるいは観光地の大型旅館などにはあったが、「街中にあるビジネスホテルに当たり前のように大浴場が完備されている」なんていう話はドーミーインが登場するまで、ほとんど聞いたことがなかった。
出張というのは、とにかく疲れるものである。新幹線や飛行機での移動は、それだけで大きく体力を削られるし、全身の筋肉もこわばってくる。ましてやコロナ禍においては移動するというだけで精神的にピリピリする時期が続いていたため、いつも以上に疲労度が大きかった。
そんな時、大浴場があると、どんなにありがたいか! 大きな湯船にゆったりと足を伸ばして浸かって「あぁ~」と声が漏れてしまうだけで、もう疲れが頭のてっぺんから湯気と一緒に抜けていく感覚。ドーミーインでしか味わえない、この疲れが抜けていく感じがいいのだ。