「人ともめないこと」こそ時短の基本

原則3はトラブル解決で信頼を得ることです。

ほとんどの仕事は「人とのやりとり」と言い換えることができると思います。社内・社外にかかわらず、仕事相手とのコミュニケーションに足踏みをしていたら、いつまで経っても仕事は進みません。仕事をきちんと進めるためには、常に周りの人と良好な関係を築いておくことが不可欠です。

いわゆるトラブルシュート、トラブルからのリカバリーには、普段の3倍の労力と時間を要すると言われています。なので、仕事の時短のためには「いかに人ともめないか」がとても大事になります。

もめるパターンで多いのは、相手が誤解しているか、お互いが誤解した認識のもと、誤った初期対応をして、火種が大きくなっているという状態だと思います。

誤った初期対応で言えば、その場しのぎの対応をして、あとでウソやごまかしがばれて、信用を損なうというケースが少なくないと思います。

トラブルとして、担当者レベルで解決できるならまだマシですが、やはり会社の信用を損ねるのが最悪です。相手が取引先であれば、取引停止になったり裁判沙汰になったりすることもあります。

ただしトラブルシュートには、一生懸命にきちんと対応すると、雨降って地固まるのたとえどおり、信頼関係が高まるというプラスの効果もあるのです。

トラブルがあって相手が怒っているときには、まず相手の立場に立って、「お怒り、ごもっともです」などと理解を示し、「何があったか、詳しく教えてくだい」などと状況をよく把握することが大事です。

もめている原因を究明できたら、速やかに適切な対策を取ります。金銭的な保障が必要であればちゃんと用意する。そして、再発防止の善後策を講じ、相手に報告します。

「アクシデント」と「インシデント」の違いを意識する

ごく当たり前の流れなのですが、案外できていないケースが多いのです。トラブルの原因がはっきりしないとか、原因はわかったけれども対策が不十分とか、再発防止策が的外れとか。たとえば、不良品が出たというトラブルなら、この際、隠れたエラーがないかまで検証すべきでしょう。

荒木陽介『「お金を生む時間」のつくり方』(朝日新聞出版)

ところがそうはならず、不十分なトラブルシュートになるのは、それにかかわる時間と労力をなるべく減らしたいからです。そうすると逆に、ずるずるともめ続け、3倍をはるかに超える時間と労力がかかってしまいます。

そうではなく、3倍の労力を惜しまず、迅速にしっかり対応すれば、3倍もの時間がかかるようなことにはならず、結果的に時短になります。特に初期動作を素早く正しく行うと、3倍もかからない場合がほとんどです。

たとえば、初めに「お怒り、ごもっともで」ではなく、「怒るようなことですか?」などと無理解な態度を取ったら、相手は怒りを倍増させて冷静に話せなくなり、原因究明に至るまで余計に時間がかかってしまうわけです。

「アクシデント」と「インシデント」の違いを意識することをおすすめします。アクシデントはトラブルになっている状態、インシデントはトラブル一歩手前の状態です。つまり、インシデントの状態のうちに、いかに労力を惜しまず、素早く対応するかが、結果的には時短につながるし、雨降って地固まる(信用の形成)にもつながるわけです。

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