確かに自民党の支持者の中には、「中国や韓国は大崩壊する!」「2020年のアメリカ大統領選挙で勝ったのはトランプ!」などと言っている人もいます。とはいえ、こうした言説は一見してバカバカしいことがわかるし、自民党もリップサービスをして彼らを基礎票としてうまく取り込みつつ、実際の政策ではある程度バランスを取って調整しています。

本気で信じている人を除き、「右の陰謀論」は見分けがつきやすいのです。検証するまでもない根拠のない言説です。

しかし「左の陰謀論」はどうでしょうか。簡単には真偽の見分けがつきにくい言説が目立ちます。それを言っている本人たちは、「事実に基づいていない妄想の中にいるのは“右”の奴らだけで、国際的視野が豊富で知的で批判精神がある俺たちは常にちゃんと現実を見ている」と信じ込んでしまっている事が多いのが厄介な点です。

一見すると知的な言葉を並べ、客観性を装ったデータを提示し「政府を批判したい人」が寄ってたかって押し上げる――。結果、彼らはどんどん現実から離れていきます。

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ウクライナ戦争で問われるメディアの力量

ロシアによるウクライナ侵攻を境に、安全保障やエネルギーの問題がメディアでも大きく取り上げられています。「リアルな議論」が必要な課題が沢山あります。

例えばドイツでは国防費を国内総生産(GDP)比で2%以上に引き上げる方針を打ち出し、ロシア産天然ガスに依存してきたエネルギー政策の見直しも急激に進んでいます。

安全保障やエネルギー問題に関する外部環境がこれだけ変わったのだから、「現実に対する責任感」があれば今までとは違う「リアルな議論」をせざるを得ないと誰でもわかるはず。

しかし今の日本では、そういう議論ができているでしょうか? 軍事的均衡状態を維持するための独りよがりの空論が、まだ日本にはのさばっているのではないでしょうか。

最近の日本では、毎年冬には電力需給の逼迫ひっぱくにより大規模停電の危機が発生するようになりました。この大規模停電が起きてしまう理由は、単に原発を再稼働するかどうか、再エネを導入するかどうか…という単純な問題ではなく、電力制度改革の細部が実情と合っていないことが原因です。