しかし、今のメディアは何が本当の原因なのかを深堀りする記事が少なく、単純に犯人探し的な論争だけが飛び交っている中で、電力の安定供給という重要な政策課題が混乱し続けてきているのです。

大事なのは「どうせ自民党政府など、自分たちの利益のことしか考えていないバカばっかりだから」というような思い込みからの単純化しすぎた構図で犯人探しを行う記事ではなく、今の電力制度がどういう利害対立に落ち込んで、どこに問題が起きているのかを深く考えていく動きをサポートする事であるはずです。

「全てが政治闘争に見える世代」から主導権を奪い返そう

とはいえコロナ禍の後期には、単に「政府はけしからん」と嘆いて見せるだけの中身のない議論ではなく、病床確保のための広域連携のあり方などをテーマに具体的な対策を深堀りして報じるメディアも明らかに増えてきたように思います。

倉本圭造『日本人のための議論と対話の教科書』(ワニブックスPLUS新書)
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電力制度改革についても、単に「日本政府がけしからん」的な記事ではなく、ちゃんと実情を深堀りした記事も日本の大手新聞でもいくつか見られて感銘を受けました。

私はよく、「複雑化した現代では、単なる政府批判でなく問題解決のためにどうすればいいのかちゃんと取材して考えるメディアが必要だ」と主張をしているのですが、同世代のメディアの人から「全くそのとおりだ」という丁寧な賛同のメールを頂くこともよくあります。

あらゆることが「権力vs反権力」の政治闘争と捉える人が多かった団塊世代が、徐々に社会から引退しています。メディアの中でも団塊世代の下の世代に主導権が移り、雰囲気が大きく変わりつつあると思います。

社会的な課題を「自己目的化した反権力」「騒いで留飲を下げるだけ」のネタにするのではなく、メディアは課題解決のために知恵を寄せ合って考えるためのハブになるべきです。これが「新しいメディアの役割」なのではないでしょうか。

罵り合いをやめて、リアルな議論をしましょう。自己満足の権力批判をしている場合ではありません。社会の中で辛い思いをしている人がいる。そこに手を差し伸べる方法をちゃんと考えられる社会をつくる一歩になるはずです。

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