「外からの脅威と闘うのではなく、自分らしさをどう守るか」

「うちの会社の“人格”ってなに」「自分らしくないことはやめよう」

平良氏の娘で、現在プラザハウス社長を務める平良由乃氏(63)は、社員によくこんな言葉をかけるという。

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日本初のショッピングセンターとして知られるプラザハウス

「いくら売れている物でも、ここにあることに違和感を覚えるものだってある。他所で買えるものはここでなくてもいい。外からの大きな脅威と闘うのではなくて、自分らしさをどう守っていくか、ずっとそれを考えてきた」

プラザハウスは2014年、隣接地に開業するイオンモールに引き抜かれたテナント跡を活用して、“琉米文化”の継承をテーマにした写真展示とアンテナショップ「RYCOM ANTHROPOLOGY(ライカム・アンソロポロジー)」をオープン。19年には、コザの街に長年消滅したままだったミニシアターを誘致したほか、国内外や地元の食材を販売する自社運営のフードマーケットを開業するなど、地域コミュニティーの復活に動き出した。

そして今年5月、本土復帰50年に合わせて仕掛けるのが、沖縄にゆかりのある芸術家やクリエイターの創作活動を支援する「CREATORS HUB(クリエイターズ・ハブ)」の運営だ。録音・撮影・配信機材などをそろえたコワーキング型の共用スタジオを貸し出し、作品の展示や人材のマッチングだけでなく、商品開発から販売、PRなどをサポートしていく。

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撮影、配信機材などをそろえ、クリエイターの創作や製作、研究活動の拠点として運営する「PLAZAHOUSE CREATORS HUB」のスタジオ

沖縄を真剣にかっこいい島にしていく

長年、由乃社長自らが県内、国内外のファッション、アート分野のつくり手と密な交流を続け、信頼関係を育んできたからこそ関われる、プラザハウスオリジナルの領域ともいえる。

数年前、「人材募集・世界から」と発信したところ、オーストリア、フランス、イタリア、インドネシア、中国出身の人材が集まってきた。オフィスを潤す混ぜこぜのコミュニケーションから、懐かしくも新しい“沖縄の感性”の風が吹きはじめている。

「プラザハウスを、沖縄で培われる人々の感性を育てる拠点にしたい。沖縄を真剣にかっこいい島にしていきたい」

由乃社長が見据える先には、店舗周辺で近く予定されている、返還された米軍基地の跡地利用の行方がある。「これまでのような施設誘致の開発ではいけないと思う。沖縄の本来の自然が感じられる場所、長寿につながる食とか、沖縄の本質を取り戻すような街にしなくては」。そう語る言葉には、その一端を担う気概が感じられた。