画期的ドリルをつくるきっかけになったベルギー留学

驚くことに、実は坂本先生もその「器用な子」だったという。

芥川賞作家の藤原智美さん(撮影=萩原美寛)

彼は高校時代にベルギーに1年留学した。現地語であるフランス語での授業についていけなかったので、最初はテキストを日本語に翻訳することから始めた。しかし、そこでハタと気がつく。自分が肝心の日本語をわかっていなかった、と思い知ったのだ。

それまで難関校の暁星高校で、国語は平均的な成績をおさめていた。しかし、答えはいつも当てずっぽうで、文の中身を理解していなかった。けれど、そこそこの成績だったからそれでよかった。

自分がわかっていなかったということを、彼はフランス語を翻訳するという学習を通して「発見」したのだ。それからは懸命に翻訳を続けた。帰国して復学すると、なんと国語の成績が急にアップしたという。教師から「むこうではフランス語はそっちのけで、日本の本ばかり読んでいたんだろう」と言われたという。

留学時代の「翻訳」は、今、絵から文、文から絵への「変換」と形を変えて、子供たちがわからないことに具体的に気づく手だてとなっている。

「家庭で親御さんは教師役になるのではなく、自分もいっしょになって楽しむようにやる」のが、この学習法の秘訣だ。そして、わからないところは、紙の辞書を引くことが重要だという。

これは私も大賛成。ネットの検索だと、ピンポイントで意味がわかり、すぐに次の作業に移ることができるが、その分、言葉の定着率が悪い。紙の辞書を引いたら、意味をノートに書き写すのがいいだろう。

考学舎は現代の寺子屋を自認している。児童のなかには、別の入塾テストに落ちて、ここへ駆け込んでくる子もいる。その彼らも、絵から文、文から絵への書(描)き換えで、読み書きの力をつけていく。

この大都会の真ん中の寺子屋教室に、私は大いに期待したい。

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