脱原発=ガスしか頼れないと分かっていた

シュレーダー氏は選挙での敗北後、政治から退き、運営会社ノルドストリームAGの幹部となり、今では(今もというべきか!)ロシア最大の石油会社のロスネフチの重役まで兼業している。言うなればプーチンの忠実なるしもべだ。

実はドイツの脱原発政策の青写真を引いたのも、1998年に政権をとったシュレーダー政権だった。シュレーダー氏はその頃すでに、将来、原発がなくなれば、いくら再エネが増えようが、頼りになるのはガスしかないということが分かっていた。つまり、脱原発とガスパイプライン建設には整合性がある。

写真=iStock.com/DirkRietschel
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そのシュレーダー氏、今や社民党の目の上のたんこぶどころか、ドイツ国民の鼻つまみ者になっているが、いまだにプーチン大統領との「男の友情」は続いているらしく、3月11日、モスクワに飛んだという。ただし、社民党の誰もがシュレーダー氏の訪露など知らないと言っている上、その後の経過も一切報じられず、モスクワでの写真もなく、はたしてプーチン大統領に会ったのかどうかも分からない。

唯一の証拠(?)は、彼の韓国人妻が、モスクワの夜景を背景にして写っているインスタグラムの写真。目を閉じ、両手を合わせ、まるで聖母マリアのようなこの写真には、さすがのドイツ人も失笑を通り越し、嫌悪感をあらわにした。この女性はシュレーダー氏の5人目の妻で、ちなみに歳の差は26歳。

EUで一人勝ち状態だったが…

いずれにせよ、2011年以来、シュレーダー氏の1本目のパイプラインのおかげで、安価なガスがロシアからドイツへ直結で送られてくるようになり、ドイツ経済は大いに潤った。さらに、ユーロ圏で金融政策が統一されていたことが幸いし、調子づいたドイツは、ドイツにとっては安くて有利な為替でどんどん輸出を伸ばした。そして、いつしかEUの中で一人勝ちと言われるようになったが、その一人勝ちをさらに強化しようとして計画されたのが「ノルドストリーム2」だった。

しかし、「ノルドストリーム2」には米国だけでなく、ほぼすべてのEU国が反対だった。第一の理由は、もちろん、ロシアに対するエネルギーの過度な依存だが、その他、ウクライナやポーランドなどは、ノルドストリーム2が開通すれば、自国を通っていた陸上パイプラインがご用済みとなるので反対、デンマークは自国の領海の生態系が乱されるとして反対した。トランプ大統領が就任すると、ノルドストリーム2の建設はついに中断するに至った。