車を踏み潰したのは誰か
ウクライナ側に不利になりそうな誤った情報ばかりが出回っているかと思いきや、実際にはロシア軍がやっていないことを、ロシアがやっていると拡散された例もある。
ロシアがウクライナへ侵攻した直後、ウクライナの首都キーウで、ロシア軍の戦車が民間の車を踏み潰したとされるビデオが世界中に出回った。ニューヨークポストやニューズウィークの記事では、「ロシアの戦車が踏み潰した」という表現になっていたが、フランスの国際ニュース専門チャンネルであるフランス24のファクトチェック部門が検証したところ、民間の車を踏み潰したのはウクライナ側の戦車だったらしいということが判明した。
調べによると、ウクライナの戦車は銃撃戦のさなか、誤って民間の車にぶつかったようだという。
「もし我々が『この戦車は、実はウクライナのものだった』と書いたとしたら、『それ見たことか、ロシアの戦車ではなかったじゃないか。結局、戦争も捏造に違いない』という話になりかねない」と、鍛治本さんはファクトチェックをするにあたっての難しさについて話す。
「言葉の壁」に“守られる”日本
では、日本はどうだろうか。偽情報が回ってきた時に鵜呑みにするなど、フェイクニュースに「弱い」という印象もあるが、実は「言語の壁」に守られ、そういった偽情報が比較的飛び火しにくいようだ。
「英語で出回る情報は、すぐにスペイン語や中国語に翻訳されるんです。スペイン語話者や中国語話者の絶対数が多いからだと思います。ところが、日本語話者はもともと世界的に見ると少ないですし、英語のニュースをわざわざ日本語に訳して拡散させてやろうという人も少ない」と鍛治本さんは言う。