上海市のロックダウンが追い打ちに

また、新型コロナウイルスの感染再拡大も中国経済の成長率を下押しする。3月に入り習氏は徹底したゼロコロナ政策を調整する考えを示した。しかし、感染急増によって、金融と経済の中心地である上海市がロックダウンを余儀なくされた。共産党政権はゼロコロナ対策を徹底せざるを得ないことを認めたといえる。常住人口約2500万人の上海市のロックダウンは、これまでの都市封鎖を上回る負の影響を中国にもたらすはずだ。

SNSには上海市民がスーパーで食料品を争う様子が投稿された。動線の遮断によって自らの安全と健康が脅かされると恐怖心理に陥る人が急増している。それによって節約心理は強まり、個人消費が減少する。動線遮断によって生産活動も停滞する。主要都市でのロックダウン実施は不動産デベロッパーなどの会計監査のさらなる遅れにもつながるだろう。

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不満を抑えるための対策がさらなる不満を呼ぶ

不動産バブル崩壊、民間IT先端企業への締め付け強化、感染再拡大が互いに共鳴するようにして中国経済の成長率は一段と低下するだろう。全人代で発表された5.5%前後の実質GDP成長率の実現はかなり難しい。一つのシナリオとして、不動産セクターではデフォルトが増え、地方政府の財政や銀行セクターに負の影響が波及する展開が予想される。

それによって人々の不平不満は高まる。それを抑えるために習政権はSNSの監視や相対的に成長期待が高いIT先端企業への締め付けを強めざるを得なくなる。感染を抑えるためにゼロコロナ対策も強化しなければならない。人々の自由はより強く制限される。都市部と農村部での戸籍制度の違いに起因する社会保障面での格差の拡大なども重なって、将来への不安を抱く人は増えるだろう。