世界経済の足を引っ張る状況は当面続く
それに加えて、ウクライナ危機を背景とする天然ガスや原油価格の上昇が、国営・国有企業の事業運営コストを増加させる。社会心理の不安定化の恐れが高まる中で中国の企業が最終価格にコストを転嫁することは難しい。中国全体で企業業績は悪化し、雇用と所得環境の不安定化懸念は高まる。
景気下支えのために財政と金融政策が総動員されたとしても、債務残高の増加によって経済全体で資本の効率性が低下しているため、景気減速を食い止めることは難しい。今後の展開によっては想定以上に中国経済の減速が鮮明化し、資金の流出圧力が強まる恐れもある。2022年の中国経済の成長率を4.5%程度と予想する経済の専門家もいる。中国経済はかなり厳しい状況に追い込まれている。
それは世界経済にとって大きなマイナスだ。リーマンショック後の世界経済は米国の緩やかな景気回復と、中国経済の成長に支えられて相応の安定を維持した。中国経済の成長率の低下傾向は鮮明化し、世界経済全体の成長ペースも鈍化するだろう。
それに加えて、ウクライナ危機によって世界経済はグローバル化からブロック化に向かい始めた。その状況下、ゼロコロナ対策によって上海市の港湾施設の稼働率は低下し、世界全体での供給制約に拍車をかける。当面、中国経済は世界経済の足を引っ張ることが懸念される。