国内基準のよりどころは
<国際的組織の相互関係と日本の施策>
日本の施策や基準については、われわれがこの一年足らずの間、現実にみてきたように、原子力安全委員会をはじめとするいくつかの機関が複雑に絡み合って管掌しています。上の図にあるように、各国際機関のレポートや勧告は相互に関連し、このうちICRPの勧告が国内施策に反映される仕組みです。後述のように、ICRPのどの番号の勧告を用いているかも明らかにされています。個別の施策については、この稿でそれぞれを取り上げることは困難ですが、施策のよりどころについては、2004年3月に原子力安全委員会傘下の低線量放射線影響分科会から出されている「低線量放射線リスクの科学的基礎―現状と課題―」*1が非常に参考になります。
この資料は公的資料としては非常にわかりやすく、低線量被ばくに対する基本的な考え方も整理されているので、ぜひ現物をご覧になっていただきたいと思います。この中にも「我が国の防護基準はICRP1990年勧告に準拠している」と明記されています。これは1998年の放射線審議会の答申を根拠にしているのですが、ICRP2007年勧告への準拠元の変更は2011年2月の同会の中間報告で検討中と示されたまま、震災を経験することになってしまいました。
なお、巻末参考資料に「低線量放射線のリスク評価を行っている主要な国際機関、学術団体、委員会の例」があり、UNSCEAR、ICRP、BEIRの名と、ほかにはNCRP=米国放射線防護測定協議会とNRPB=英国放射線防護庁が記載されています。ECRRはこれらと同様の形では記載されていません。
*1: http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/houbou/houbou001/ssiryo5_1.pdf (2012年2月17日現在)
次回は、今回まとめた歴史的な経緯を踏まえたうえで、低線量被ばくの考え方がどう変化しているか、という議論に戻りたいと思います。