「女性の心や体をもっと知って、人間として成長したい」
コロナ禍のデビューということもあり、経済的な事情での入店かと思いきや、そうではないという。ユニさんは、女風デビューの動機をこう語る。
「これまで自分が人間として未熟だなと感じることがあって、成長したいと思ったんです」
話を聞くと、入店の動機は、最後に付き合った彼女の存在が大きかったという。ユニさんは年上の女性が好きで、これまでも付き合ってきた女性たちのほとんどが年上だった。それは自分の母親のような強い女性に憧れていたからに他ならない。歴代の彼女たちは、母親のように世話を焼いてくれたし、それが当たり前だと思っていた。
しかし最後に付き合った女性は、そんなユニさんの勝手な“彼女像”をことごとく打ち崩したのだという。
例えばこれまでの彼女は、家でご飯を食べるときも料理が出てくるまで待っていれば良かった。しかしその女性は、一緒に料理を作ることを求めてきた。「自立した」男と女の在り方を、ユニさんはそのとき人生で初めて知ったのだ。
「いざ自分がキッチンに立つと、何をどうすればいいのか、全くわからなかったんです。これまで自炊をしたこともないし、そんな自分が歯がゆかった。でも、この自分の幼稚さは料理だけの問題じゃない。自分の人生において全て通じることだと感じたんですよ。このままだと自分は人間として小さいままだし、マズいと焦ったんですよね。女性の心や体をもっと知って、寄り添いたい。女性の欲の根源の部分に触れることで、本質が見えるんじゃないか。それが、僕が女風をやってみようと思った動機ですね」
結局、女性とは別れることになるのだが、その経験がきっかけとなり女風の世界へと足を踏み入れることを決めた。
男女で違う「欲望の質」
ユニさんは一般的にはモテるタイプだろうと推測できる。相手には不自由しないため、「これまでの自分」のままであり続けることもできたはずだ。しかしユニさんは性的なサービスを女性に提供する職種にあえて身を置くことで、女性への一種の甘えを断ち切り大人の男性への階段を上りたいと感じたのだろう。
まだ新人セラピストということもあり、うまく女性をエスコートできずに壁にぶつかることもある。しかし、そんな困難も人生の学びになっている。
「僕たち男は竿に振り回されてる感じがあるけど、女の人って精神的なものを求めていて、欲望がもっと真っすぐでピュアだなと思うんです。そんな女性の欲望と向き合えて、心の底からすごくうれしいんです。誰にも言えなかった秘められた欲望や無防備な姿を晒してもらえるという快感もある。今まさに、ずっと知りたかった女性の本質を知りつつある最中なんです。女風によって、自分の人生の深いところを学んでいるなと感じますね」
日々の努力もあってか、年明けからリピートも少しずつ入り始め、新人という名前からは変わりつつある。初対面では緊張気味だった女性が、帰り際に心も体も解放されてとびきりの笑顔になる。それがユニさんの何よりの喜びだ。ユニさんは女風を通じて、初めて女性たちと真っ正面から向き合い、かつての自分自身からも脱皮しようとしているのかもしれない。