10代で大量飲酒すると脳の容積が小さくなる

先生、20歳未満の人がアルコールを飲むことで、どんな弊害があるのでしょうか。

「20歳未満の人の飲酒にはさまざまな弊害があります。特に脳に対する影響が最も研究されています。具体的には、アルコールによる脳の神経細胞の障害作用は、20歳未満のほうが大きいのです。記憶に関わる海馬に対するダメージは大きく、これによって記憶機能が低下する可能性があります」と樋口さんは話す。

「大量飲酒をした場合、まったく飲まない20歳未満と比較して、海馬の容積が明らかに小さいことも分かっています(*1)。これはアルコールによって海馬の神経細胞が死に、容積が小さくなったということです」(樋口さん)

出所=葉石かおり『名医が教える飲酒の科学

樋口さんによると、大人の脳が完成するのは20歳前後なのだという。

「人間の脳は生後6歳までに大人の大きさの90~95%になります。脳内の細胞の成長のピークは男子が11歳、女子が12歳半ですが、20歳前後まで成長が続き、その後、成熟した脳へと変化していきます」(樋口さん)

未成年は急性アルコール中毒のリスクも高まる

なるほど、脳は20歳前後まで成長を続ける、だからこそ、20歳までの飲酒の影響は大きいのだ。若気の至りとはいえ、私は脳の成長が終わっていない時期に酒を飲んでいたのかと冷や汗が出るとともに、いくばくかの後悔が……。自分の記憶力のなさを年齢のせいにしていたが、もしかしたら未成年飲酒が関係しているのかも、と不安になる。

さらに樋口さんは、未成年の飲酒は、血中アルコール濃度が上がりやすく、急性アルコール中毒のリスクが高まると警告する。

「20歳未満の人間に飲酒させることはできないため、人間を対象にしたデータはありませんが、動物を対象にした研究が多数あります。

20歳未満に相当するラットと20歳以上に相当するラットに同量のアルコールを投与して比較した研究では、20歳未満のラットは20歳以上のラットより、血中アルコール濃度、脳内アルコール濃度が高くなり、アルコールの分解速度が遅いという結果になりました。人間においても同様の傾向になると推測されます(*2)」(樋口さん)

また一般的に「飲酒経験がないほど、脳が敏感に反応し、酔いの程度が強くなる」と樋口さん。自分の適量すら分からない若者は、酒のやめどきを知らない。急性アルコール中毒になるリスクは大いにある。