男子はインポテンツ、女子は月経不順のリスク

つまり、アルコールに関しては、「若いときに覚えておいたほうがいい」というわけではないのだ。お恥ずかしい話だが、「年齢が若い=新陳代謝が良い=アルコール分解能力がある」と思っていたが、20歳未満にはそのまま当てはめてはいけない。

体への影響はまだある。「20歳未満の飲酒は、性ホルモンのバランスにも影響します。未成年のうちに飲酒を続けると、男子ではインポテンツ、女子では月経の周期が乱れたりするリスクが高まります。また骨の発育が遅れるという報告もあります」(樋口さん)

かつてはお盆や正月に人が多く集まると、酔って子どもに酒を勧める親類がひとりはいたものだ。こうした話を聞くにつけ、子どもに酒を勧めたり、ヘタに興味をあおったりするのは改めて危険だと思う。

飲み始めが早いほどアルコール依存症になりやすい

日本では、民法が改正され、成人になる年齢が20歳から18歳へと引き下げられた。にもかかわらず、飲酒は20歳以降のままだ。つまり、それだけ20歳未満の飲酒の害が大きいからなのだが、樋口さんに聞いた話のなかで私が最も印象に残ったのは、「酒を飲み始める年齢が低いほど、早いうちにアルコール依存症になってしまう傾向がある」ということだ。

「疫学調査から、飲酒開始年齢が低いほど、成人になってから大量飲酒になりやすく、さらには短期間でアルコール依存症になりやすいことが分かっています。アメリカの4万2862人を対象とした調査では、飲酒開始年齢が低いほど、アルコール依存症の生涯有病率が高くなる傾向があるという結果が出ています(*3)」(樋口さん)

【図表2】飲酒開始年齢が低いほど依存症になりやすい
出所=葉石かおり『名医が教える飲酒の科学

中学生の頃、冠婚葬祭時になると、酔っぱらった親戚のおじさんたちが「お前も飲むか?」と普通にビールを勧めてきた。だが、そうやって未成年のうちから飲酒の習慣がついてしまったら、将来依存症になってしまうリスクが高まるのだ。だから、そうやって未成年に酒を勧めるのは絶対にやめなくてはならない。

樋口さんによると、20歳未満の飲酒は心や行動にも大きく影響するという。