お酒の失敗で人生が台無しになることも

「20歳未満の飲酒は社会的逸脱行為を招きやすいことも知られています。未成年は成人に比べ、飲酒による行動抑制がききにくいのです。代表的なものが飲酒運転です。また、性的な問題行動に発展しやすいことも指摘されています」(樋口さん)

大学時代を思い出すと、確かに20歳未満で飲酒をした同級生はテンションマックスとなり、暴力行為を起こして警察のお世話になっていたっけ。「若さゆえの過ち」と笑えるうちはいいが、飲酒運転で事故などを起こしては、被害者の人生を破壊してしまうのはもちろん、若くして本人の人生も台無しになってしまう。

ところで、日本での飲酒可能年齢は20歳以上だが、実はこの年齢は国によって異なっているのをご存じだろうか。

各国の飲酒可能年齢を見てみると、ヨーロッパでは比較的低く、16歳から飲酒が認められている国もある(*4)。ドイツはビール、ワインなら16歳から許可されている。ちょっと早いような気もするが、これはお国柄というものだろう。そして、アメリカは21歳となっている。

【図表3】各国の法定飲酒年齢
出所=葉石かおり『名医が教える飲酒の科学

アメリカは飲酒可能年齢を21歳に引き上げ

アメリカでは、一度飲酒可能年齢を18歳に引き下げたのだが、その後、21歳に戻している。

「アメリカでは、1970~75年にかけて29の州で飲酒可能年齢を引き下げました。引き下げの幅は州によって異なりますが、最も多かったのが21歳から18歳への引き下げです。しかし、この引き下げによって、年少者の飲酒運転による事故数や死亡者数が増加したという報告が多くあり、年少者の飲酒量が増えたという報告もありました。

この結果を受け、アメリカでは、1970年代後半から1980年代初めにかけて、多くの州で飲酒可能年齢を21歳に戻したのです」(樋口さん)

飲酒可能年齢引き上げにより、これらの州で飲酒関連事故数の減少が報告された。「そして、1984年には当時のレーガン政権が、飲酒可能年齢引き上げに抵抗する州の高速道路補助金の一部をカットする法律を制定したため、1988年までにすべての州で飲酒可能年齢が21歳に引き上げられました」(樋口さん)