ネットとリアル、どちらも大切にするのは、「二兎を追う者は一兎をも得ず」になりかねず、経営的にはバランスが悪いかもしれない。しかし、榊が両方の世界を全力ダッシュで行き来することで、大勢のファンを作ることにつながった。

さらに、それまで原価計算が甘かった商品づくりにも目を向け、「作れば作るほど赤字」と判明した不採算商品のうち、20%の製造を中止。残りの80%は利益が出るように値上げした。「ぜんぜん売れなくなったらどうしよう」と不安を抱えながらの決断だったが、杞憂きゆうに終わった。

筆者撮影
和菓子屋さんのどら焼サンド。一口サイズで食べやすく人気商品の一つになった
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どら焼サンドの「いちご生クリームあんサンどら」

「値上げ前と後で、売れた個数はぜんぜん変わりませんでした。これで、確信しました。お客さんが求めているのは安さではなくて、和菓子屋さんで買うという体験とか、職人の手作りでおいしいからとか、人に持っていくと喜ばれるという満足感なんですよね」

フルーツ大福とかき氷のヒット、不採算商品のカットと値上げという構造改革により、2021年を黒字で終えることができた。

「2020年は、テレビの効果で葛きゃんでぃが7万個売れて10年ぶりの黒字になりましたが、それはラッキーな黒字。昨年は地道にやった結果だったので、嬉しかったですね」

プライベートブランドを立ち上げた狙い

榊は昨秋、ひとつ大きな決断をした。和菓子のプライベートブランド「萌え木」を立ち上げたのだ。そこにはふたつの理由がある。

「をかのの財務をもうちょっと早く改善するために、萌え木の和菓子の製造をお願いしようというのがひとつ。もうひとつ、自分が和菓子界で注目されるようになってきたのは周りのおかげで、ほんとにラッキーだったなと思っていて、その幸運を還元するために、和菓子の間口を広げる役になろうと考えたんです」