ドラえもんの映画は日本とほぼ同額の興行収入

『君の名は。』は日本では約414億円だったので、日本と比べると数字としては低いが、『ドラえもん』は日本の約83億円に対して中国でも79億円であり、産業としては日本に次ぐ興行収入を得た。

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中国とその他の地域との比較ではどうか。例えば台湾での『君の名は。』の興行収入は2.5億台湾ドル(約10億円)、『名探偵コナン ゼロの執行人』は9235万台湾ドル(約3.6億円)だった。もちろん人口差もあるが、マーケットとしてみた場合、大陸の市場は非常に大きな可能性を秘めた市場と言える。

このことから、ムーミンも展開次第によっては巨大ビジネスに発展する可能性がある。日本以上の収益を得ることは至難の業であることは映画の例からもおわかりいただけるだろうが、日本より少し劣る程度、もしくは日本と同等程度の利益を見込める可能性は十分にあるのだ。

中国特有の「表現規制」問題

だが、中国で知名度を獲得するのは並大抵のことではない。

また、本稿で詳述するが、中国には表現の規制や複雑な許可制度といった、日本市場には存在しない障壁が多数ある。

加えて、中国といえば、町中に海賊版のDVDショップが並び、インターネット上では違法ダウンロードサイトやファイル共有ソフト「BitTorrent」でコンテンツがやり取りされている……というふうに、依然「海賊版」のイメージを持っている人も多いだろう。そんなところに、伊藤忠が進出して大丈夫なのだろうか。

本稿では、いま改めて中国の著作権ビジネス環境の歴史を追って振り返り、「ムーミン」がどのような問題に直面し、どう解決していくべきなのか、そして最後に日本IP(知的財産)の中国進出について考察する。