成人年齢引き下げで「標的」拡大の恐れ

これまでは、大学1年生に加えて、3年生以上をターゲットに、お金への興味関心を利用する手口も増えていました。就活セミナーで声をかけ、少し会話を重ねた後に、「マルチ商法」(連鎖販売取引)や投資セミナーなどに誘うのです。

カルトの勧誘では、東大、京大、阪大、早慶、MARCH、関関同立など、いわゆる有名大学の学生ほど狙われやすい傾向にあります。組織内にそうした学生を先に取り込むこむと、次の勧誘対象の信頼を獲得しやすくなるからです。

今まで大学3年生以上が狙われていたのは、20歳になれば「民法上の成人」になるからです。成人は、親の同意なく、自らの責任でローンを組んだり消費者金融から借り入れしたりすることができます。さらに、未成年者ならうっかり契約を結んだとしても、親の同意がなければ後から取り消せますが、成人はそうはいきません。

最近、被害者が続出した手口としては、投資学習用の教材などと称したUSBメモリを60万円ほどで買わせて、その購入者に、新たな参加者を勧誘させるという方法で被害が広がったものがあります。被害者たちは、SNS上の知人やサークル仲間に誘われ、将来の所得不足に不安があることから「儲ける」ことへの興味関心を煽られ、「良きサイドビジネスになるのでは」という期待から話に乗ってしまっていました。

しかし、これはハイリスクなマネーゲームというか「ギャンブル投資」への勧誘ですし、どう考えても価値の低い情報商材へのぼったくりです。「教材を買えば儲かる」「人生の成功者になれる」などと、実現が困難なのに、夢をやたらに煽って勧誘活動に縛りつけ、学業やプライベートの生活に制限をかけたり、放棄させたりしています。しかも、友人や知人の勧誘に成功すれば、その人数に応じてお金がもらえるという仕組みは、まるでマルチ商法的でもありますから、これは商業カルトと捉えるべきでしょう。

2022年4月からは、成人年齢が現行の20歳から18歳に引き下げられます。これによって、新たに成人となる大学1~2年生が商業カルトのターゲットになるだろうことは想像に難くありません。

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高校生をSNSで「青田買い」

さらに、近年はSNSの普及に伴って「青田買い」も進行しています。勧誘のタイミングが、大学生から新入生、入学式、合格発表、高校生へとどんどん早まってきているのです。

高校3年生では、進学先の情報を提供してくれるサイトが、実はカルトの運営によるものだったという事例があります。「めざす大学に在籍する先輩が、進学のアドバイスをしてくれる」という形をとりながら、徐々に集団に引き入れていく手口でした。

最近の高校生は、SNSでたくさんの友だちとつながっていますから、あっという間に高校中に広めてしまうこともあります。本人は、いい情報を皆に教えてあげていると思い込んでいるので、良いことをしているつもりで被害を広めてしまうのです。

では、高校生や大学生の子を持つ親は、どんな点に気をつけたらいいのでしょうか。最近のカルトはSNS上で近づいてくることが多いため、わが子が接点を持った時点で気づける親はほとんどいないと思います。できるかもしれないのは、取り込まれそうな場合の兆候を見逃さないことです。