王族がパン食い競争も
オランダ王室にとって、オープンであることは何よりも大切。特に1980年から2013年まで王位にあったベアトリクス前女王の時代にこの傾向が強まった。
毎年4月30日の「女王の日」(現在は4月27日の「国王の日」)に王族が国内の都市を訪問し、国民と交流するという伝統が始まったのもベアトリクス時代から。王族を迎える街では、市民がパフォーマンスをしたり、王族メンバーに直接花束やプレゼントを手渡したり、一緒に写真を撮ったりする。王族がパン食い競争に参加することもある。
この日はオランダ王室の色であるオレンジ色の服を着た人々で、街はオレンジ一色に染まる。スーパーマーケットでは王族の写真がプリントされた商品が売られ、パン屋に並ぶケーキもオレンジ色に。新国王が誕生した2013年4月30日は特に盛大で、店頭で販売されるトイレットペーパーや街の噴水の水もオレンジに染まった。
毎年、この日は市役所の許可なく商売することが認められており、全国の路上や公園は、フリーマーケットでにぎわう。自由で、商売上手で、オレンジ色の、オランダらしさにあふれた光景が見られる1日なのだ。
王妃インタビューの視聴率は51%
ベアトリクス時代の伝統を受け継ぎ、ウィレム=アレキサンダー国王も開かれた王室を目指している。
中でも注目されたのは2021年5月、マキシマ王妃50歳の誕生日を記念して、テレビで放送された1時間におよぶ特別インタビューだ。視聴率はなんと51%。国民の関心の高さを示すものだった。
インタビューでは、アルゼンチン出身の王妃がスペインで現国王(当時は王子)に初めて出会った日についても振り返った。「私がパーティーの写真を撮っていたので、ウィレム=アレキサンダーは私のことをパパラッチだと思っていたようです。(2人の関係は)あんまりいいスタートではなかったですね」
交際が始まってからは、黒髪のかつらをかぶって変装し、オランダ各地のカフェを巡って「ビッターボールン(小さなコロッケのようなオランダのスナック)」を食べながら市井の人たちと会話してオランダ語を練習。オランダを知ろうと努力したという。
パーソナルな質問も投げかけられたが、国王や3人の娘との関係、2018年に自死した妹への思いなど、彼女は誠実に、時には涙をそっとぬぐいながら答えていた。
コロナ禍のバカンスもテレビで反省の意
インタビューは、コロナ禍のギリシャ旅行にも及んだ。2020年秋、国王一家はバカンスを過ごそうとギリシャの別荘に飛び立ったが、国民の反感を買って急遽引き返し、国王夫妻が国民に謝罪したという経緯がある。
マキシマ王妃は改めて、「判断を誤りました。旅行は許されていたけれど、(国民と)連帯する行動ではありませんでした」と、反省の意を表した。
番組放送後の国民の反応は上々。王妃に親しみを感じたという人が多く、ソーシャルメディアなどでは賞賛の声が相次いだ。